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2012-10-21 00:00
(連載)ウィキリークスは情報の義賊(1)
山下 英次
大阪市立大学名誉教授
不正の内部告発は、一般に社会全体にとって好ましい。国際的内部告発サイト、ウィキリークス(2006年10月発足)のジュリアン・アサンジ(オーストラリア人)が、スウェーデンで女性に暴行したと告発されている事件に関し、英国最高裁判所は、2012年6月、同氏のスウェーデンへの移送を決定した。スウェーデンに移送されれば、いずれ米国に移送され、何らかの容疑をかけられ、重罪で告発されることを恐れたアサンジは、ロンドンのエクアドル大使館に駆け込んだ。
ラファエル・コレア大統領は、同年8月16日、同氏のエクアドルへの亡命を認めた。他方、英国政府は、アサンジがエクアドル大使館のある建物から一歩でも出たら、直ちに身柄を拘束すると警告しており、両国の立場は完全に対立している。そうした中、南米諸国は、その件を巡り、8月24日に、12カ国によって構成されるUNASUR(南米諸国連合)外相会議を開催し、エクアドルに対する連帯を示すとともに、基本的には同国の立場を擁護する決定を下した。
こうした状況は、南米諸国のほとんどが、今や米国の側に立っていないことを改めて示した。それは、現在の世界統治においては、一種のプルーラリズム(多元主義)が機能しているということでもある。ウィキリークスは、これまで、短期間に、米軍グアンタナモ基地においてジュネーブ違反の行為が日常的に行われていること、スイス巨大銀行が脱税天国であること、米軍ヘリコプターによるイラクでの民間人殺害ビデオ、米在外公館とワシントンとの間の合計25万件におよぶ外交公電のリーク等々、極めて重要な不正行為について、数々の内部告発をリークしてきた。
ここ何年間も、欧州危機が続いているが、これは、ギリシャやポルトガルが長年にわたって、財政収支を粉飾していたことが背景にある。長年にわたって粉飾が発覚しなかったために、その間に、事態が深刻化してしまったということがある。仮に、早いうちに内部告発者が出ていれば、両国の危機は、ここまで深刻化せずに済んだはずである。(つづく)
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