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2012-10-20 00:00
(連載)日米同盟を腐食させる「原発ゼロ」(2)
高畑 昭男
ジャーナリスト
日本は米国との原子力協定を通じて、平和利用技術の研究開発を深めてきた。その結果、今や米国も主要な原発関連技術を実質的に日本に頼っている。インドやベトナムなどの途上国に、安全で信頼度の高い原発を普及していくことが核不拡散政策を強化し、日米両国の商業的利益にもつながる。日本が一方的に研究開発を投げ出せば、米国も共倒れになる。ポネマン副長官の懸念も、平たくいえば「同盟国なのに勝手すぎる」ということだ。
しかも、それが中国の原発大国化に手を貸す恐れもある。ウィーンの国際原子力機関(IAEA)総会で、日本は「原発ゼロ」方針の説明に終始したが、対照的に中国は原発建設に積極姿勢を貫いた。日米の原発に代わって、核物質の軍事転用を防ぐ拡散防止技術に乏しい中国型原発が途上国に広がるとすれば、国際安全保障上も深刻な事態が心配される。
今年4月、米国のシンクタンク「新アメリカ安全保障センター」(CNAS)がまとめた「中国の挑戦」と題する報告は、原子力が日米にとって不可欠の基盤的エネルギー源であり、「両国の原発政策の食い違いを放置すれば、同盟の亀裂を招きかねない」とも警告している。軍事・外交面だけでなく、エネルギー戦略面でも中国の台頭に日米が一体で取り組む必要がある。それでなくとも、民主党政権は普天間飛行場移設問題を迷走させ、海兵隊の新型輸送機オスプレイ配備でも遅れるなど、日米同盟を空洞化の危機にさらしてきた。
尖閣諸島をめぐる日中の緊張が高まっているが、普天間移設や米軍再編を完了した上でオスプレイ配備を進めていれば、中国に対する抑止の実効性もずっと高まっていたに違いない。同盟国や国際社会に加え、日本の経済界、労働界指導者も「原発ゼロ」に明確な反対を表明した。野田首相は党代表選で再選を果たしたものの、安全で信頼される原発の普及を求める世界の潮流を根本的に読み違えているのではないか。同盟を損なう「原発ゼロ」を直ちに見直し、世界的視野で同盟協力強化に転じる決断がほしいと思う。(おわり)
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