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2012-10-12 00:00
ささやかれる内閣「信任」決議の奇策
杉浦 正章
政治評論家
首相・野田佳彦が臨時国会召集とこれに先立つ党首会談を明言したのは、四つに組んだまま土俵中央からじりじりと土俵際に追い込まれてきたということだろう。自民党総裁・安倍晋三は、この際「解散を明言しなければ、臨時国会に応じない」などという“大人げない”態度をとらずに、とりあえず臨時国会開会に持ち込み、山ほどある追及材料を駆使して、解散に追い込むべきだろう。最初から国民生活に直結する法案を人質に取って「約束せよ」と言っても、世論は支持しない。野田は、「しぶしぶ追い込まれる」という高等戦術をとろうとしている可能性がある。これを見極めるべきだ。こうした中で、あの平成の“怪人”輿石東がまたまた怪しげな動きをし始めた。案の定、生活代表・小沢一郎に接近しようとしている。10月10日夜の鳩山由紀夫との会談で、「小沢に協力を求めてゆきたい」と関係改善への斡旋を求めたのだ。怪しいのはこの話をわざわざリークしたことだ。何も、もともと小沢の“執事”なのだから、いつでも本人に会えるはずだ。リークしたのは「この手があるぞ」と脅しをかけているのだ。
この手とは、最近永田町で囁かれている野田内閣「信任」決議の可決だ。とかく不信任にばかりに目が行くが、小沢の37人は不信任に同調すれば、解散・総選挙で議席が4分の1になりかねない。民主党同様に選挙は遅いほどよいのだ。信任決議案が否決されれば、不信任案可決と同様に、憲法によって解散か総辞職かとなるが、可決されれば、政権は持ちこたえる可能性がある。こういう“悪知恵”を輿石が考えているというのだが、輿石からすれば、とっておきのウルトラCであろう。のらりくらりと対応しているのは、小沢との根回しがまだ必要なのだ。小沢なら乗りかねないし、乗れば“解散阻止連合”の成立だ。もっとも、事がリークしては、早期解散を主張するマスコミが総攻撃をするのは必定だ。あまりに党利党略に堕した手段であるからだ。しかし、自民党の突撃一本やりの姿勢をそらすためにに、政権側は奇策といえども追い詰められれば使うだろう。現に過去に二度決議されている。1992年の宮沢内閣と2008年の福田内閣の時に与党によって可決されており、いずれも“政権延命”に使われているのだ。まさに百鬼夜行の状況に事態は到達しつつある。
野田はこの“奇策”の相談をまだ受けていないようだ。財務省の信頼の厚い野田にしてみれば、当面の至上命題は赤字国債発行法案の成立だ。成立を図るには、解散をせざるを得ない状況に追い込まれるであろうことも意識しているに違いない。それに「近いうち解散」の公約は厳として存在する。ただ安倍との党首会談で解散を明言することは極めて難しいだろう。解散を明言した時点で離党者が続出し、離党防止の“輿石カード”は使えなくなるからだ。永田町筋は「野田首相は、むしろ追い込まれるのを待っているという高等戦術かも知れない」と漏らしている。自らは解散に言及できないが、事態の展開で解散をせざるを得なくなるのを待つというのだ。いいかげんな改造をしたのも、「わざと野党の攻撃の隙を作った」というのだ。
こうした状況の中で、自民党執行部の作戦はなっていない。せっかくの臨時国会開会を、野田の“解散明言”を条件にして遅らせかねない対応をしている。国会を開会してしまえば、ことは確実に自公ペースで進む。外国人献金の法相・田中慶秋、失言女王の文科相・田中真紀子など追求対象には事欠かない。こともあろうに復興予算の流用などという、それだけで内閣不信任に値する問題も発生している。おまけに任期は3年を過ぎて、これ以上の“解散適齢期”はない状況だ。これで追い込めなければ、執行部は無能のそしりを受けても仕方がない。そこで今後の日程だが、臨時国会は29日招集説があるが、何でも先送りの輿石が邪魔をして、月内招集できるかどうかは分からない。しかし、いくら何でも11月上旬には招集されるだろう。そこで自民党は早期解散の世論を背景に、ぎりぎりと詰めて、解散ムードを高めることになろう。自公が狙っているのは、11月中旬解散、27日告示、12月9日投票だ。いずれにしても野田の臨時国会召集応諾で、解散への動きが加速されることは間違いない。
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