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2012-10-05 00:00
米大統領選挙はオバマで決まりか?
川上 高司
拓殖大学教授
やっぱりロムニーは貧困層が嫌いな1%の人か。自滅への道を歩き始めたロムニー、選挙前に致命的な失言をしてしまった。アメリカ国政では「大きな政府」と「小さな政府」という考え方が伝統的に対立している。個人の自由に委ねて政府は何もすべきでないというのが「小さな政府」で共和党の基本方針である。「国民の47%は税金を払っていない。彼らは政府に食わしてもらっているあわれな連中で私の関知するところではない」と、今年5月開かれた共和党の資金拠出者たちとの食事会でロムニーが政府の支援で暮らす人々を「関知しない」と切り捨てるような発言をしたビデオが、18日アメリカのマザー・ジョーンズ誌電子版上で公開され物議を醸し出している。
確かに約47%が連邦税を収めていない。それは、低所得で非課税対象になっている貧困世帯、退役軍人、高齢者がほとんどだ。1%の富裕層に入るロムニーは税金の優遇措置を受けて2010年には200万ドルも税金を節約していることからもわかるように、適正に税金を払っていないのは富裕層も同じなのであるが、ロムニーは彼らには笑顔を向けっぱなしなのだろう。この発言が暴露されると、さすがに共和党内からも批判が続出した。ブッシュ時代には国務副長官を務めたこともあるリチャード・アーミテージは、「47%には退役軍人も含まれているし彼らは政府の支援を受けている。ロムニーは国政というものが全くわかっていない」と批判した。元軍人でもある彼にとっては命をかけて国に奉仕した兵士が国から支援を受けることは当然だし、それが国政というものなのだ。
オバマ大統領もテレビインタビューで「政府が国民の生活向上を支援してなにが悪いのだろうか」と、至極もっともなコメントをした。一方のロムニーは直ちに釈明の記者会見を開いて「弱者切り捨てという意味ではない」と釈明に必死だが、選挙戦に大きなダメージを与えたことは否めない。鍵をにぎるフロリダ州ではロムニーの支持は「47%発言」以後、一気に下落傾向となった。フロリダ州は高齢者が多いので発言が影響しているのは間違いない。
そもそもロムニーは、一般市民にとって親しみにくい存在だと受け止められている。9月12日~16日にかけて行われたピュー・リサーチ・センターの世論調査によれば、ロムニーに親近感を抱いているのは23%にとどまり、対するオバマは66%の国民に親近感をもたれている。特にロムニーは女性に人気がなく、オバマが56%の女性の支持を得ているのに対して37%しか支持されていない。男性の支持はほぼ互角なのだから女性に受けが悪いことは一目瞭然だ。おそらくはますます女性の嫌悪感を高めてしまった「47%発言」で、どこまで巻き返せるか。時間は限られている。
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