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2012-10-02 00:00
「滞貨一掃百均内閣」では、3か月が限度だ
杉浦 正章
政治評論家
まるで不治の病にかかった商店店主が、店じまいで何もかもたたき売りに出た「滞貨一掃百均内閣」の趣だ。自民党幹事長・石破茂が珍しく「思い出作り」と文学的表現をしたが、まさにその通りだ。民主党政権は解散・総選挙で退場の運命にあり、あまりのひどさに恐らく10年は政権に戻れないであろう。国家・国民よりも、ひたすら内向きの延命治療だけに専念しなければならない首相・野田佳彦が哀れに見えてくる。野田の心境を読むに、もう「厠の火事」であろう。自暴自棄といってもよい“やけくそ”状態であり、進退はまさに窮まった。3か月でつぶれる政権からは、民意も離れ、目先の利く官僚は、早くも自民党に接近し始めた。民主党政権の場合、改造する度に弱体化することが証明されているが、なぜそれを承知で野田が改造をしなければならなかったかについては、全く不明のままだ。野田は「いつも代表選があったあとは、改造を党の人事、国会の人事などと一体的に行ってきた」と述べた。まるで「いつもやっているから、やった」と言わんばかりの投げやりの姿勢だ。
一番の理由をあえて探し出せば、代表選への報復の論功行賞人事だ。田中真紀子、田中慶秋ら党代表選で自分を支持した顔ぶれが入閣し、代表選で争った原口一博、鹿野道彦、赤松広隆を支持した議員の入閣はゼロだ。野田はその理由を記者会見で問われて「代表選で負けた方が入閣を希望していたかというと、それはない」と開き直った。代表選での野田批判の強さに報復人事で答えたとしか思えない。札付きの田中をあえて文科相という重要ポジションにすえたのも全く腑に落ちないが、田中は数か月前から新潟の地元では「次は入閣します」と漏らしている。野田が約束しなければ言える言葉ではあるまい。永田町筋によると、小沢に近い幹事長・輿石東が入閣を強く推したと言われ、早くから決まっていたとみられる。野田には出来れば父親以来の中国への田中人脈を活用したい、という思いがあったと見るのは正しいだろう。それももっぱら裏で、外務省を通じない対策に使おうというわけだ。野田は真っ向から否定しているが、あまりの対外人脈の無さがそうさせたに違いない。しかし、独善政治家真紀子を一触即発状態の対中外交に参入させるのは、危険きわまりなく、国を危うくしかねない側面を持つ。財務省内の反発を押し切って起用した城島光力も危うい。国対委員長など党役員しか経験がなく、財務は全くの素人。野党が手ぐすねを引いている。
改造により党内基盤が固まったかと言えば、田中、三井辨雄、中塚一宏ら小沢系人脈を3人入れたくらいで、固まるにはほど遠い。あと6人が離党して、過半数割れとなり、不信任案が出されれば、小沢一郎は問責に賛成したのと同様に、確実に不信任案にも賛成する。改造によって、かえって弱点は一層露呈され、離党など流動化の側面はいささかも変化していない。政権にとって最大の危機は、民心が次の政権を自民党と見て、離反していることであろう。民心だけでなく、官僚も、経済界も、離反だ。田中人事は文科省に「地獄の悪夢の再来」(幹部)という、まさに危機的な緊張感を生じさせており、実態は“面従腹背”だろう。同省は“いじめ対策”どころではない。“省内いじめ対策”に戦々恐々なのだ。その他の省庁の官僚にも、3か月我慢すれば「素人政権」は過ぎ去るという思いが濃厚にあり、何としてでも解散に追い込むという自民党の姿勢を、陰ながら応援するだろう。つまり政権への情報より、先物買いで自民党への情報提供を優先させるだろう。自民党は国会での追及材料に不自由はしない。「自民・官僚連係プレー」の構図となる。財界の野田離れは「原発ゼロ」で決定的になったが、改造でも経団連会長・米倉弘昌が「近いうちに国民の信を問うべきだ」と、財界としては異例の早期解散を要求した。米倉は「当分経済成長の実現は、民主導で取り組む」と“絶縁状を”たたきつけた感じだ。
今後の政局展開は党首会談に絞られる。野田は9月26日に自民党総裁・安倍晋三に電話で「双方の人事や内閣改造が落ち着いた段階で党首会談を行いたい」と改造直後の首脳会談を提案した。ところが1日は「今週末党の人事の最終的な確定となるので、そういうものも踏まえて、すでに決めた幹事長、国対委員長を中心に党首会談の持ち方等を含めての協議を始める。まだいま、いつかといえる段階ではない」と直後の会談を否定した。むしろ輿石などを使って時間稼ぎに出る可能性がある。来週になればもう10月も中旬入りであり、臨時国会の開催はますます遅れる可能性がある。自民党の早期解散攻勢に少しでも延命したいという姿勢がありありと出た。 しかし公党間で「近いうち解散」を約束したのは8月8日である。誰が見ても8月上旬の段階での「近いうち」の約束は9月か10月解散であろう。野田は谷垣との会談の際「11月にならないか」と打診、谷垣は拒否した経緯がある。さらに先延ばししようとしても野党、マスコミ、財界を敵に回しては不可能だ。ここはジタバタすべきではない。首相が公然とうそをついたのでは子供の教育にも悪い。ここは“やけくそ改造”をしたのだから、“やけくそ解散”にも踏み切るべきだ。赤字国債発行法案、定数是正法案と引き替えに話し合い解散に応ずるしかないと観念すべきだ。国家危急存亡の時に、もう真紀子や城島の失言で馬鹿騒ぎなどしているひまはない。公党間の約束順守は憲政の常道であり、使い捨て内閣を造ったなら諦めも早い方がいい。しょせん袋小路に追い込まれる。
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