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2012-10-01 00:00
尖閣で危機に立つ日米同盟
川上 高司
拓殖大学教授
今、日米同盟は戦後最大の危機に直面している。米国は果たして、尖閣諸島をめぐる日中の衝突を黙視するのか、それとも日米安保を適応するのか。9.18の満州事変の日、中国漁船千隻が尖閣へ押し寄せる。その直前、パネッタ国防長官が訪日した。「最も敏感な人物が、敏感な時期に、敏感な国を訪れた」(中国国営中央テレビ)のであり、日本と中国に対する大きなメッセージとなった。パネッタは「条約上の義務は守る」と日米安保第5条の適応を明言すると同時に、「主権を巡る対立では特定の立場をとらない」と領有権では中立を語った。これをどう解釈するか。米国は日中が軍事衝突へとエスカレーションした場合どう対応するか、に今焦点が当たる。
日本の対応は、海上保安庁の巡視船で漁船の領海侵犯を警告するであろうが、千隻の漁船は到底抑えきれない。また中国は監視船を相当数投入すると考えられ海保と中国監視船はにらみ合いを続けることとなろう。その間、漁船団は堂々と日本領海で操業し、事によっては尖閣への上陸を行うかもしれない。中国人の何十人、何百人がいっせいに上陸を敢行すればいくら沖縄県警が尖閣で逮捕しようとしても多勢に無勢である。また、海保と中国漁船、もしくは中国監視船との間に衝突が起こった場合、日本は自衛艦に海上警備行動を発令するであろう。その場合、中国海軍がどうでるかが問われる。次のエスカレーションは、海上自衛艦と中国艦隊とのにらみ合いに発展するであろうが偶発的な紛争も予想される。偶発的な衝突、あるいはいずれかによる挑発行為に他方が応じた場合、あるいは両側いずれかの民間人あるいは軍人に死傷者がでた場合といろいろ考えられる。 この時に米軍がどうでるかである。タイミングを逸してしまったら日中の紛争にエスカレーションしかねない。
そもそも尖閣諸島はサンフランシスコ平和条約の第3条に基づき南西諸島の一部としてアメリカの施政下におかれていた。沖縄が日本に返還されて以来、尖閣諸島のうちの久場島は防衛省が地権者から借り上げ米軍の射爆場として使用されていた。現時点でも米軍はいつでも射爆訓練可能である。その尖閣諸島に対して中国が上陸してくるのである。今回の米軍の尖閣諸島に対する対応は、当然ながら東南アジア諸国のみならず韓国も息を潜めてみているに違いない。もし、尖閣諸島が中国に占有されても米国が中立の立場を貫き通すならば米国との同盟関係もしくは友好関係にある諸国は、米国とのつきあい方を考え直すであろう。
その最先端にいるのが日本である。尖閣諸島が中国に占領された場合は、ちょうど日本国内が国政選挙の直前とあって保守政権あるいは新興政権の誕生となるのは間違いない。尖閣諸島への日本政府ならびに米国政府の対応が即、選挙へ影響するのである。もし米国が日米安保の5条事態を発動し抑止力を行使した場合には野田政権に有利となろう。アーミテージ報告は、「日本に一等国(tier-one-nation)にとどまる意志があるのか」と最後通牒をつきつけた。では、米側に問いたい「米国は一等国(tier-one-nation)である日本を守るのか」。日米同盟が今後、存続するかどうかは米国の気概にかかっているのである。
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