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2012-10-01 00:00
10月の環境税導入は白紙に戻して再設計せよ
高峰 康修
日本国際フォーラム客員主任研究員
10月から温室効果ガス削減を目的に化石燃料への課税を強化する、地球温暖化対策税(いわゆる環境税)が導入される。例えば、原油・石油製品の場合、本年10月には1リットル当たり0.25円、2014年4月には同0.25円、2016年4月には同0.26円が上乗せされることになる。この地球温暖化対策税の導入により、家計は1世帯当たり年間平均1,228円の負担増となる、との試算を政府は発表している。しかし、原発の稼働が停止し、火力発電によってそれを代替しているため、産業界の負担は大きくなり、物価の上昇を通じた家計へのさらなる負担は確実であろう。当然、産業の空洞化の加速による雇用の大規模な喪失も予想され、日本経済への影響は大きなものとなろう。
他方、地球温暖化懐疑説という科学的に根拠の薄弱な立場をとるのでなければ、温室効果ガス削減のために何らかの国民的負担が発生すること自体は、必ずしも否定されるべきものではない。むしろ、適切に制度設計された効果的なものならば、そういう負担は甘受すべきである。10月からの環境税導入が問題なのは、確固たる理念あるいは原理原則に基づいておらず、理にかなったものではないという点である。環境税は、税収増を目的とするものではなく、汚染者負担の原則に基づいて、汚染物質(この場合温室効果ガス)を経済的合理性に基づいて削減することを制度趣旨とする。すなわち、経済主体は、環境税による負担増と温室効果ガスの限界削減費用を比較し、前者のほうが大きければ、温室効果ガスを削減するという行為をとることになる。したがって、環境税の税率を決めるには、まず何よりも、削減目標が明確でなければならない。そのためには、エネルギー政策との整合性が不可欠である。
しかし、民主党政権は、2020年に1990年比25%削減という無謀な目標を掲げていたが、福島第一原発の事故を受けた原発停止と再稼働の遅滞という事態に直面して、政府が9月に発表した「革新的エネルギー・環境戦略」では、削減目標を2030年に1990年比で約20%とした上で、「不断に見直していく」ということにした。「1990年比25%削減」が事実上撤回されたのは歓迎すべきこととはいえ、新たな削減目標は不明確なままであることに変わりはなく、温室効果ガス削減目標とエネルギー政策の有機的結合がなされているとは到底言い難い。こうした状況で、温室効果ガス削減の手段である環境税の導入を強行するのは、全く不合理であり、そういう不合理な負担は受け入れられない。
また、環境税の目的は、温室効果ガスの削減だが、原発の稼働停止は温室効果ガスを増加させる政策である。再生可能エネルギーの導入を大幅に増やせばよいという反論もあろうが、急速に達成できるわけもなく、火力発電の増加による温室効果ガス排出は、確実に、トータルで大幅に増加する。まさにブレーキとアクセルを同時に踏むような矛盾した政策であるとしかいいようがない。10月から導入される地球温暖化対策税は、一旦白紙に戻して、環境政策とエネルギー政策を整合的なものに見直す(「革新的エネルギー・環境戦略」の提言は到底そのようなものとは言えない)中で、あらためて環境税についても再設計するのが筋である。
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