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2012-09-28 00:00
決定的に遅れをとっている国際宣伝戦
鹿又 勝己
会社員
日本のマスコミはここ数日、国連総会で野田首相や玄葉外相が尖閣列島も念頭において、名指しはせず「領土紛争は国際法に従って解決されるべきだ」と演説したと、尖閣問題で何か意味のあることをしたような報道がされているが、こんなものはいつもの「内輪誉め」にすぎない。中国共産党のネット版機関紙「人民網」は9月28日、そのトップに「一部日本政客の小知恵は大きな代価に行き着く」との記事を掲げ、野田首相や藤村官房長官のいわゆる「大局論」を嘲笑するとともに、「国際社会が野田佳彦の国連総会発言を批判」という記事を、そのすぐ下に掲げた。
中味は南アフリカやカンボジア、パキスタンあたりの新聞記事の良いとこ取りで、別に中国に好意的論評(カンボジアを除けば)が国際的にオンパレードされているというわけではない。気を使ったはずの野田首相が「野田佳彦」と呼び捨てにされているところに、日本的気配りの成果が現れている。この記事の中で唯一気になったのはニューヨーク・タイムズ紙の論評の引用だ。中国語からの訳だと、「日本政府は国際法と歴史的観点の枠組みから魚釣島(ママ)は日本領と主張。かつ、争いの余地はないと強調する。しかし日本政府は意図的に重要な歴史的事実から逃れようとしている。すなわち、1895年に不法に魚釣島(ママ)を占領したことだ。魚釣島(ママ)はいかなる条約中の『戦利品』でもない(この部分はそのとおりなので、前後の文章から見ると意味不明)。(ニューヨーク・タイムズ紙の)文章は日本政府が頻繁に引用する2件の文献がいずれも具体的説得力を持たない、と(日本の主張に)反駁している」となっている。ニューヨーク・タイムズ紙ですら、このような認識で記事を書いているところに、日本の立ち位置の危うさを感ぜざるを得ない。
このニューヨーク・タイムズ紙の論評記事は中国共産党の宣伝メディアが引用しているものなので、その意義は差し引いて考えることもできる。だが、実は、小生的にはもっと気が滅入ったのは「ニューズ・ウィーク日本語版」の最新号(10月3日号)の記事、「アラブの怒りより日中の怒りが怖い理由」である。筆者は「ニューズ・ウィーク」のコラムニストでハーバード大学歴史学部教授のニーアル・ファーガソン氏だ。氏は記事の中で尖閣列島領有の経緯について、「・・・資料からは尖閣列島は中国・清朝の領土だったが、1895年に日本に併合されたことになっている(日清戦争)」と書いている。このように、ニーアル・ファーガソン氏ほどの碩学ですら中国側の宣伝から自由になりえていない。尖閣列島は下関条約とは何の関係もない。それより何ヶ月も前に日本が無人島、無主であることを国際的に確認して沖縄県に併合宣言し、清国政府は当時交戦中であったにもかかわらず異議を唱えなかった。したがって、日清戦争の講和条約たる下関条約でも何も触れられていない。それどころか現在、「Wikipedia 日清戦争」に掲載されている「Stielers Handatlas 1891 63.jpg」の地図ではすでに1891年現在、尖閣諸島は非清国領と認識されている(国境線が尖閣諸島の西側に引かれている)。
こうした基本的事実すら、国際的に認知されていないのはいったいどういうわけだ。外務省のHPには、9月27日現在いまだに尖閣について説明するコーナーがない。同じ「ニューズ・ウィーク」最新号で、中国大陸各地で暴行・略奪をほしいままにした「反日デモ隊」の正体について詳細にレポートしている、ふるまいよしこ氏(フリーライター)は、「中国対策を最前線で担当する北京の大使館は、暴動発生中も中国語のマイクロブログでのんびりと『マリモ』『鶴岡八幡宮観光案内』『シルバーウィーク』などを中国市民に紹介し続ける意識しかなかったことは記憶にとどめておくべきだ」と書いている。自分たちが大使館内で楽しむワインのビンテージには研究熱心な外務官僚たちの意図的ボイコットがいかに国益を損ない、われわれ納税者の不利益を拡大させているか。この年になってもまだ所得税を徴収されている高齢・低賃金・肉体労働者は、憤激に耐えない。
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