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2012-09-24 00:00
自民「臨時国会解散」へデスマッチの態勢
杉浦 正章
政治評論家
民主、自民両党党首選挙の動向と政局の展開は、相当頭を使わなければ解けない。あえて確実な輪郭だけを描けば、代表に選出された首相・野田佳彦が、幹事長・輿石東を留任させて、あわよくば解散先延ばしを狙って“仕掛け”をし始めたことだろう。これに対して自民党総裁候補らは9月23日、ほぼ「先延ばし絶対阻止」で足並みを揃えた。ここに来て議員票を軸に俄然有利に展開している安倍晋太郎はもちろん、石原伸晃、石破茂の誰がなろうと、解散に追い込む姿勢は整っている。公明党代表・山口那津男も、野田の姿勢を「墓穴を掘る」と警告している。結局は野田と自公両党のデスマッチへと移行する。一方で、全国紙は早期解散と引き替えに、重要法案成立要求で足並みを揃えるだろう。朝日はその先頭を切って22日付社説で「何よりも、政権交代時のマニフェストを裏切る形で消費増税を決めた事実は重い。できるだけ早く国民の審判を仰ぐべきなのは当然のことだ」と主張している。こうした状況下で野田が臨時国会解散を逃げ切れるかどうかだが、まず逃げ切れまいと見る。
“面従腹背”の輿石を野田がなぜ続投させるかだが、選挙敗北を覚悟した様子がうかがえる。なぜなら顔を見ただけで民主党への投票に拒絶反応が生ずる輿石を選挙の顔に使うと言うことは、選挙を投げている証拠だからだ。その代わりに優先しようとしているものは何かというと、党分裂の回避だ。選挙対策を最優先マターから外してまで、分裂を回避しなければならないという深刻な状況が民主党内に存在しているのだ。民主党はこれ以上の離党者が出れば不信任案が成立してしまうという瀬戸際に立たされている。「大阪維新の会」の新党に合流する3人を除くと、国民新党を加えても239人の過半数割れまで9人となっている。党内では原口一博を先頭に、なお10人前後が離党のタイミングを狙っているのだ。これを食い止めるために必死の人事を行おうとしているのが野田の姿だ。そこには「国」はなく「党」しかない。輿石は同日選挙論者で、3党合意にもことごとく反対してきており、今度の続投は狡猾にもこれを“活用”しようというものだ。そして新体制で、できれば解散の先延ばしをしようというわけだが、解散をめぐる政局の構図を、一幹事長人事で急変させることは簡単ではない。
野田は、自民党が問責決議を可決したことにより、「近いうち解散」がチャラになったと言わんばかりの発言を繰り返し始めている。しかし首相が政治のキーポイントで行った“約束”が、そう簡単にほごにできるかというと、甘いのだ。民主党内の分裂回避という全くの党内事情によって公党間の約束を撤回すれば、政党史上まれに見る「虚言首相」となる。党内からも疑問の声が上がり始めた。政調会長・前原誠司は23日のNHKで「麻生政権をみても、『先延ばしすればそれでいいのか』というと、それで議席を減らす場合もあるので、タイミングはあると思う。それ以上に赤字国債発行法案と衆議院の1票の格差の是正を与野党で議論し、結論を得ることが大事だ」と述べたのだ。明らかに赤字国債、定数是正の両法案と引き替えに、解散へと進まざるを得ないという“憲政の常道”を述べたのだ。自民党は23日、誰がなっても早期解散を要求する態勢が整った。候補の中でこれまでただ一人石破が「解散権は首相の専権事項」などと野田が喜びそうな妥協の姿勢を見せていた。これは理屈に走る石破の悪い癖だ。さっそく党内あちこちから「全党が早期解散・総選挙に追い込もうと目の色を変えているときに、評論家やってんじゃない」(党幹部)との反発が生じた。まずいと思ったか、23日のNHKでは石破は「自民党は政権を担わなければならず、どうやって早く解散させるかを考えるのは当たり前のことだ」と軌道を修正、早期解散要求に転じた。
その石破は総裁選の第1回投票でトップになることは確実だが、国会議員の人望がなく、総裁に選出されるかどうかは全く混沌としている。候補の競り合いの結果、1回目の投票で石破が250票の過半数をとれる可能性は極めて少ない。多数派工作での石破の議員票が現在40票前後だから、地方票で3分の2の210票以上を取らなければならないが、まず無理だ。そうなると2回目の議員だけによる決選投票に持ち込まれるが、56年ぶりの逆転の可能性が出てきているのだ。1956年の自民党総裁選挙で1位の岸信介が逆転敗北を喫したのと同じだ。上位2名による決選投票が 行われ、2,3位連合の密約が石橋湛山と石井光次郎の間で結ばれていた結果、2位だった石橋が逆転当選を果たしたのだ。安倍が2位となる公算が強まっている。その場合は3位の石原票が安倍に流れる可能性が高い。石原が2位の場合は、安倍の票の大半は石原に向かうと見られる。したがって、石破が逆転敗北する可能性が出てきているのだ。石破が勝つには、地方票を大量に獲得して過半数を1回で制するか、過半数に迫って議員票に雪崩現象を起こすかだが、これも容易ではない。いずれにしても総裁選後は、新総裁が早期解散に向けて“突撃”する形となる。輿石では臨時国会は全く動かない。解散のないままでは通常国会も動かない。状況は野田が「近いうち解散」の言質を引きづり出された政権行き詰まりの構図といささかの変化もない。
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