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2012-09-13 00:00
“長老”の石原「高値疲れ」、“地方”の石破「強気配」
杉浦 正章
政治評論家
安倍晋三が9月12日立候補して自民党総裁選挙の構図が固まった。5人が混戦の形で、14日告示、26日投開票にむけてデッドヒートを繰り広げる。行方は混沌としているが、だからと言って予測をサボるわけにはいくまい。方向は「爺殺し」 に成功した石原伸晃と地方票に強い石破茂の決戦となりそうだ。両者とも党員を含めた第1回の投票で過半数獲得は困難とみられ、199人の国会議員で争われる決戦投票にもつれ込む公算が強い。旧来通りの長老・派閥の支持を土台とする石原と旧弊打破を訴える石破の争いは全く予断を許さない。市場用語を使って総裁選を分析してみる。まず安倍は「軟腸」ならぬ「軟調弱含み」で、「続落」の流れだ。何と言っても、政界も、国民も、1度賞味期限切れを経験しており、これが最大のウイークポイントだ。退陣の直接的原因となった潰瘍性大腸炎は「2年前に新薬が開発され、克服した」と強調しているが、メンタルな側面があったという指摘もある。町村派を町村信孝と2分しての戦いとなるが、同派43人中の支持者は10数人にとどまるとされている。2007年の参院選で大敗して首相を辞任、その後6年間自民党が低迷したきっかけを作った。マイナスの印象ばかりが目立ち、大阪のポピュリズムに接近しているのも、総裁選にはプラスにはなるまい。日本維新の会は300選挙区に立候補を予定しており、明らかに総選挙では「敵」となる相手だ。
32人の古賀派から出る政調会長代理・林芳正は、参院議員であり、これだけでマイナスイメージだ。「弱気配のまま続落」といった状況だ。まあ参加することに意義があるオリンピック精神だ。古賀派も最初の投票では林に入れる向きがいるだろうが、古賀誠は決選投票では石原でまとめるだろう。町村信孝は候補の中で一番政策面で経験豊かであり、安定感があるが、67歳とあって、世代交代のうねりの中で立場は弱い。町村派の30人以上の確保が見込まれるものの、「石・石決戦」に埋没しがちである。株式用語では「小安い、小緩む、小甘い」といった状況だ。展望も開けにくいのが実情だ。むしろ決選投票で石原につくか、石破につくか、が注目されるところだが、森喜朗と同様に石原志向が強い。
そこで本命の石原と石破だ。株価では相当の期間高値が続いて、上がりそうで上がらない状態、もしくは反落が予想される状態 を「高値疲れ」というが、石原にはその傾向がある。やせ馬の先走り的でもある。若いのに長老に“秋波”を送って、旧弊の派閥の支持に依存するのは、イメージが悪すぎるが、これが自民党総裁選挙の伝統であり、その伝統を忠実に守っているだけに強い。町村派、額賀派(28人)、古賀派の主要3派の人数は100人を超えている。これが長老の命令で全員決選投票に動けば、勝負はあったことになるが、果たしてそうなるか。最近では自民党の派閥の締め付けは弱い。加えて52人の無派閥議員がいる。第1回投票の動向を見て最終態度を決めるケースも多いだろう。「高値疲れ」の主因は、主君・谷垣禎一への“裏切り”があまりにも露骨であったからだ。平成の明智光秀のレッテルはいかにもまずい。長老依存と明智光秀が新聞や民放テレビの格好の攻撃材料になっており、今後「一段高」は期待できまい。むしろ「反落」の危機がありうる。
石破株は「強気配」にある。最初の勝負で地方票をどれだけ獲得できるかが勝負の分かれ目になるだろう。石破が地方行脚を繰り返してきた背景は、地方票狙いにある。政調会長を外されてから落選議員の支援で全国を行脚、コツコツと支持を固めてきた。またテレビによく出て、その歯切れの良さから地方党員の評判がいい。石破が狙っているのは森の退陣を受けた2001年の自民党総裁選のケースだ。事実上派閥勢力をバックにした橋本龍太郎と国民的人気の小泉純一郎の戦いとなった。その結果、小泉が「自民党をぶっ壊す」と訴えて、地滑り的に地方票を獲得し、勝利につなげた。1回目の選挙で300票の地方票を地滑り的に獲得すれば、「石破株急騰」も夢ではない。これが石原との勝負に勝てる唯一の方法でもある。要するに、総裁選の動向は、議員票では石原で決まりの流れだが、この議員票を上回る地方票があるから即断が難しいのだ。
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