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2012-09-08 00:00
(連載)「東アジア共同体」への私見(1)
袴田 茂樹
新潟県立大学教授
ロシア専門家として、「東アジア共同体」研究プロジェクト誘われたが、これにいかに取り組むか悩んだ。ロシアやカザフスタンなどの「関税同盟」やプーチンが提唱した「ユーラシア同盟」のように、旧ソ連諸国を経済的、政治的に統合しようとする動きもある。そのような動きを、欧州統合や東アジア共同体の動きと比較することも可能だ。この研究プロジェクトの共同研究者として私に期待されたのは、恐らくそのような比較分析であろう。
しかし、率直に述べると、私はもともと「東アジア共同体」には、厳しい見解を有している。また、欧州統合が急速に進み、それが人類社会の未来を示すモデルとして欧米でも日本でもユーフォリア的に歓迎されていた時も、主権国家の超克、国家対立やナショナリズムの克服は、それほど簡単ではないと見ていた。
私は青山学院大学ではロシア論だけでなく、「欧州圏概論」の講義も担当していた。この講義ではもちろん、欧州統合についてもその肯定論も懐疑論もかなり詳しく紹介した。しかし私は、当初から統合欧州の将来に懐疑的だった一部の―主として金融や経済分野の―専門家たちの見解を中心に、統合に対する懐疑論をより積極的に学生に紹介した。政治学分野では、グローバリズムや欧州統合の時代には、国民国家とか主権、領土、国境などといったものはもはや過去のものになりつつあるといった、ポストモダニストあるいはコンストラクティヴィストの考え方が一時圧倒的な支持を得た。講義では、このような考えに対しても、疑問を提示した。
今日では、ギリシャの財政問題やユーロ危機をきっかけに、欧州統合に関しては楽天的展望よりも、その問題点の方が議論の中心になっている。誘われたプロジェクトの共同研究者の多くは、私とは異なり、「東アジア共同体」にかなり好意的な見解を有しておられると感じた。そこで、どのような立場で共同研究に参加するか、当初から悩んだ訳である。論文集として共同の著作を発行するという段階になって、私は、むしろこの際、日頃から考えている「東アジア共同体」に関しての批判的な見解を率直に述べようと決めて、それを実行させて頂いた。(つづく)
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