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2012-08-24 00:00
超円高をまず直せ
田村 秀男
ジャーナリスト
すったもんだの揚げ句、消費増税法案が国会で成立した。自民党による内閣不信任案や問責決議案提出の動きを、大手メディアがこぞって批判し、「消費増税法案が廃案に追い込まれると、日本は国際金融市場で信認を失い、日本国債が暴落する」というキャンペーンを展開したのが、最も効いたようだ。その背後には財務官僚がいることはいうまでもない。日経新聞などの見立てとは逆に、実は世界で一番安全な資産と評価されている円と日本国債に増税の裏付けができたのだから、超円高がますます進んで民間は増税、デフレと三重苦で沈むだろう。
そのあたりを、マクロ経済政策論の泰斗、筑波大の宍戸駿太郎名誉教授がミッドウェー海戦(1942年6月5日)敗北と重ねて論じておられる。同海戦では、当時世界最強とうたわれた南雲機動部隊が惨敗した。米軍の戦闘機の性能、パイロットの技能とも日本軍に劣っていたが、情報力だけは日本を圧倒していた。日本の艦隊司令部は暗号解読を軽視したうえに、偵察機が発信した敵艦隊の情報を黙殺した。翻って「野田機動部隊」はどうか、と教授は問いかける。経済作戦の目標は超円高是正・脱デフレと成長による税の自然増収を最優先すべきなのに、円高・デフレを助長しかねない消費増税を優先させる。そして情報力の中核となるべき内閣府のマクロ計量経済モデルは、増税を推進する財務官僚に都合のよいように操作されている。
野田政権という司令部は財務官僚軍団に全面依存しているうえに、民主党という司令部の基盤は分裂中だ。これでは、円高・デフレと戦わずして負けるのが必定。これでは日本国民として傍観していくわけにはいかない。総選挙で司令部を総取り換えするのは当然だが、「近いうちに」というあいまいなレトリックで妥協する自民党執行部が、まとまった戦略を持っているようにはとてもみえない。ずるずると混迷政局が長引いた揚げ句、ようやく成立するであろう次の司令部がやはり財務官僚に操られるまま同じ愚を繰り返す恐れが十分にある。
そこで筆者が提起するのは、政権という司令部の最優先目標を「超円高是正」一点に絞る案である。ボロボロの野田佳彦氏がたとえ延命しても、超円高という敵を殲滅しなければならない。超円高は日本の主力艦隊の自爆を誘う。例えば、日本の株価は円・韓国ウォン相場に強く相関する。ウォンの対円相場の下落率以上に日本株が下方に振れる。韓国当局がウォン安政策を続ければ続けるほど、日本株全体を押し下げるのだが、韓国が国益を優先させるのは当然だ。真の問題は日本の当局にある。野田政権は消費増税がデフレと円高を招くことに無頓着だ。日銀は政府の無策をよいことに米欧のような量的緩和政策を拒否し、円高の進行をむしろ促している。
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