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2012-08-03 00:00
野田は「解散」で名誉ある譲歩をせよ
杉浦 正章
政治評論家
まるで人種差別だ。人格、識見、専門知識と3拍子そろっている人物を「原子力ムラ出身」として反対する。なりふり構わず反対の先頭に立つ鳩山由紀夫は、「ルーピームラ村長」のくせに国会議員をやっていていいのかと言いたくなる。原子力規制委員会人事は与野党ともに政局化すべきではない。国のエネルギー政策の根幹を担う人事であり、委員長候補の田中俊一も国会での発言を聞く限り公正な判断力の持ち主である。首相・野田佳彦はここにきてぐらついてはいけない。もはや重要法案も人事も解散覚悟でなければ乗り切れないことを知るべき時だ。規制委人事ではマスコミの対応もくっきりと割れた。社説は読売が「最重視すべきは委員の能力だ」、産経が「良識的なバランス感覚を期待できる人選」と評価した。一方で朝日は「原子力ムラと関係の深い人物が多いとの声が上がっている」「特に経歴を見れば原発の推進側にいたことは間違いない」と疑問を呈した。執念深く社説で2度にわたり、政界の人事反対の動きをあおっている。毎日に到っては「番人にふさわしいのか」と反対姿勢だ。要するに、原発反対の新聞は人事に反対、再稼働推進の社は賛成の方向だ。
ここで焦点となるのは、過去の履歴ではなく、国のエネルギー政策の生殺与奪をになう委員長人事の公平性だ。そこで田中の国会発言を分析すれば、ポイントは2点に尽きる。それは「40年を超えた原発は厳格にチェックし、要件を満たさなければ運転させない姿勢で臨むべきだ」「調査の結果、活断層の影響があるとの判断になれば運転停止を求めるべきだ。再稼働した大飯原発についても規制委が調査に加わり、(敷地内に)活断層があれば止めてもらう」だ。この発言から見れば、「原子力ムラ」にどっぷりとつかった感じではない。むしろ原子力発電に関する専門知識を持ちながら、公平性を維持している。「でたらめ」との別名で、首相・菅直人とともに事故深刻化にひたすら“貢献”した原子力安全委員会委員長・班目春樹とは格段の差がある。読売が社説で「原発で重大な事故が起きれば、規制委が対策の最前線に立つ。委員長が、単独で対処措置を決定しなければならない場合もある。電力会社や関係機関などとの接点がなく、現場の実態も知らない人物では務まるはずがない」と指摘している通りだ。レッテル張りで人事を決めては将来に禍根を残す。
この人事に対して先頭に立って反対している鳩山は、田中を「ミスター原子力村の人物。国民の期待に応えるものになっていない」と批判、「再考を求める」との声明を出した。党内でも反原発の急進派議員らが会合を繰り返し、人事案件の撤回を強硬に求めている。明らかに人事を政局に利用しようとしているのである。人事反対派は「反原発の人間が含まれていない」と主張するが、これこそ語るに落ちた話だ。公平中立であるべき人事を反原発で固め、原発ゼロを目指そうとしているのだ。これに対して政府・与党は人事を貫く方針を維持している。官房長官・藤村修は8月2日「ベストの案を国会に提示した」と述べ、原発事故担当相の細野豪志も同様の立場だ。幹事長・輿石東は「原則として、党で決めたことには従ってもらう」と党議拘束をかける考えを示した。しかし、党内は反原発の風潮もあり、国会での採決となれば造反者も出かねない状況である。
民主党内は消費増税法案と同様に、人事をめぐる内紛が生じているのが現状だ。まさにあらゆる案件に造反が起きるという政権末期の症状を呈し始めたことになる。早期解散戦略をとる野党がこれを見逃さないわけがない。自民党総裁・谷垣禎一は2日、「与党の中から差し替えるべきだという話が出ており、真剣な提案なのかどうかすら疑いたくなる。論評以前の問題だ」と批判した。国会における同意人事では衆参両院が同意しなければ廃案になるため、参院で多数を占める野党の動向も焦点になっている。過半数で反対すれば実現しない。加えて民主党執行部の消費増税法案採決先延ばし策に業を煮やした自民党は、7日にも首相問責決議案を提出する方針を決めた。そうすれば事態は人事案件どころではなくなる。人事は宙に浮いて政局となるのだ。
こうしたなかで首相・野田佳彦の対応がかったるい。1日夜も党所属参院議員らとの会合で「経歴から問題ないと聞いたのだが」と困惑の表情だったという。ここで野田がなすべきことは、菅直人や朝日の主張を聞いて、減少しつつある反原発デモの指導者などと会談などしているときではない。必要なのは、早急に谷垣や公明党代表・山口那津男と党首会談を開くことだ。会談では3党合意に基づく消費増税法案に加えて、原子力委人事、赤字国債法案、衆院定数是正法案の4重要案件に絞って話し合い、今国会での処理で合意に達するべきだ。その代償として今国会解散が無理なら秋の臨時国会冒頭解散を確約することだ。ここは、政局より国家百年の計を念頭に、野田が名誉ある譲歩で事態を切り開くべき時だ。
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