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2012-07-31 00:00
(連載)公共交通にみる規制緩和の負の遺産(2)
山下 英次
大阪市立大学名誉教授
タクシー1台当たりの収入が極端に少なくなったために、今では、タクシー運転手は、それだけでは家族を養えるような職業ではなくなった。いま、日本のタクシー運転手は、ほとんどが高齢者であるが、それは、年金を受給しながらでないとやっていけないほど収入が低くなってしまったからである。本来、タクシーの運転手は、体力的にはきついが、収入は比較的良いので、若いうちに稼いで、比較的早めに引退するという傾向の職業であった。それが、現在の日本では、政策の失敗によって、全く逆になってしまった。
免許制などによってタクシーの台数制限をしていない国は、おそらく他にないのではないだろうか。欧米諸国のどこへいっても、働き盛りの年代の人がタクシーの運転手をしている。家族を十分に養えるような収入が得られるからであろう。昔は、日本でも、タクシーの運転手は、かなり収入の多い職業だったそうである。タクシーの客が日本では欧州より相対的に少ないなどということは断じてないであろう。極端な供給過剰が問題なのである。
日本では、タクシー運転手のほとんどが高齢者になってしまったために、運転手中の意識喪失などによる人命を危うくするような事故も絶えない。国の政策というものは、重いものである。政策の失敗のために、人命すら危険に晒すような状況を作り出してしまう。市場万能主義に基づいた日本のバス・タクシー政策は大失敗だったわけであり、早急に台数制限を有効にできるような免許制に戻すべきである。
最近、各国ともに、格安航空会社(LCC)の増殖が激しい。今のところ大きな問題は表面化していないようであるが、いずれ安全性の面で容易ならざる事態になるのではないかと心配である。事故が起きたら、非常に多くの人命が危険に晒される可能性が高い航空業界で、高成長至上主義に基づいて、単なる価格競争によって無理矢理に需要を喚起しようというのは如何なものであろうか。確かに、かつての航空運賃は明らかに高すぎ、何とかならないものかと思ってきたが、今では、通常の航空会社の運賃もリーゾナブルな水準となっている。そもそもLCCは必要なのであろうか。(おわり)
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