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2012-07-31 00:00
朝日よ、安保もエネルギーも天から降らぬ
杉浦 正章
政治評論家
7月30日付の朝日新聞はまさに反原発一色の編集方針で覆われた。社説では、国会を取り巻く前日のデモを「もの言わぬ国民による異議申し立て」と礼賛した。「もの言わぬ国民」は普通サイレント・マジョリティで、デモに参加しない市民をさすのだが、朝日の用語は特別なのだろうか。60年安保の時もそうであったが、その圧倒的影響力を使って、朝日はデモ扇動の先頭に立っているようにみえる。間接民主主義では原発再稼働の動きを止められず、大衆を煽っての原発再稼働阻止に動き始めたように見える。しかし、これは民主主義、議会政治の否定につながりかねない危険な側面を持つものであろう。同紙は、オスプレイ配備にも反対姿勢を強めている。朝日に代表される原発、オスプレイ反対の論調には、安全保障とエネルギーは天から降ってくるという、日本独特の甘いイデオロギーが貫かれており、説得力に欠ける。
60年安保に際して朝日は、そのあおりが利きすぎて死人まで出た事態に驚き、読売、毎日に呼びかけて、「共同宣言」をそれぞれの新聞紙上に発表した。「暴力を排し、議会主義を守れ」という宣言である。これを機に引き潮の如くデモの波は収まったが、マスメディアのマッチポンプ性を物語る戦後最大の逸話である。今回の場合も、30日付社説「民主主義を鍛え直そう」で、国会を取り囲むデモの動きを、デモ参加者の発言を各所にちりばめ、またもやマッチポンプのマッチを刷り続けている。しかし、勢い余ってか、各所にぼろが目立つ。「抗議の人波が膨れあがるのにあわせて、与野党の議員が行動に加わるようになった」とあたかも国会議員が大量に参加しているような調子で述べている。だが、参加者はだれかというと、ルーピー兼宇宙人の鳩山由紀夫、テレビのマイクと見れば飛び付いて発言したがる川内博史、自民党の異端児・河野太郎、社会党左派の流れを後生大事に受け継ぐ福島瑞穂らである。議員ではないが、瀬戸内寂聴も金切り声を上げて反原発を唱えるが、いづれも共通項がある。それは、度し難いポピュリズムだ。大衆にこびを呈することに生きがいをもった人々だ。60年安保の時は社会党委員長の浅沼稻次郎委員長は、こびなど売らずにデモの先頭に立ったものだ。規模も参加政治家も迫力が違った。
また社説は、福島の原発事故を「これは天災ではなく、電力会社や政府による人災だ」と言い切ったが、これほど我田引水の社説を知らない。まぎれもなく1200年に1度の天災が、電源を直撃したことがすべての発端なのであり、東電現場職員は命がけで戦った。事故を止める方法が他にあったなら、提示すべきであろうが、できまい。また社説は、抗議行動の主催者らと、首相・野田佳彦が「話し合ってはどうか」と提案しているが、これも間接民主主義の否定だ。それでは首相は、原発再稼働論者の声なき声をどう聞くのか。朝日は27日付の社説でも、関電社長・八木誠の「原発再稼働は需給ではなく、わが国のエネルギー安全保障を考えてのことだ」と語ったことに対して、「本音は自社の安全保障を考えてだろう」と無礼千万の論評をしている。これこそまっとうな論壇では決して使ってはならない“邪推”を基にしている議論だ。ここまで社長を侮辱にされては、関電も朝日に広告を出すべきではない。要するに、朝日の論調を貫くものは、無責任な「エネルギーは天から降ってくる」という思想である。朝日は、今原発を止めて、うなぎ登りに上がるであろう電気料金に責任を持てるのか。料金値上げはすべてに波及する。間違いなく我が国経済の根幹を揺るがす。デモ参加者のミルク代にも影響しかねない。回り回って構造的不況に突入し、参加した老人の医療費、生活保護費、年金にも影響が出かねない。デモを煽ってその結果招く事態に責任が持てるのか。60年安保のように「ポンプ」で沈静化すればよいとでも思っているのか。また原発のリスクを言うが、火力発電の排気ガスによる死者や発電所ダムの決壊による死亡者の方が圧倒的に多い、という米国の調査結果があることも知るべきであろう。日本に原発事故で死者はいない。
オスプレイの導入にも、社説で「配備強行は米にも不利益」と反対しているが、ここにも「安全保障は天から降ってくる」という思想が根底にある。なぜこのように甘い論調を繰り返すのだろうか。米軍によるオスプレイの配備は安保条約上認められている「装備の変更」であり、緊張の度を加える北東アジア情勢に対処するためのものである。風評で事故ばかりが取りざたされるが、海兵隊の重大事故率はオスプレイが1.93であり、他の戦闘機の2.45より低い。明らかに米国の戦略は尖閣列島も含めた極東全体を俯瞰してのものである。航続距離から見てもオスプレイは中国の尖閣諸島進出への抑止力になるものである。その証拠に中国の新聞はオスプレイを「中国に向けられた剣」と論じている。朝日は、中国の空母建造など「尖閣に向けられた青竜刀」には目をつぶり、輸送力増強のための配備に難癖をつけられるのか。海兵隊は輸送ヘリであるオスプレイの導入により、国内災害でも大量の人員や被災者の搬送に役立てるだろう。東日本大震災でめざましい活躍をした海兵隊にオスプレイがあれば、間違いなく救える被災者の数は増したのだ。だから筆者がかねてから言っているように自衛隊も災害対策に主眼を置き、オスプレイを配備すればよいのだ。災害など国難に直面したときだけ海兵隊を“使ってやろう”などという卑しい魂胆では、そのうちに安保体制そのものが崩れかねないことを知るべきであろう。
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