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2012-07-30 00:00
(連載)公共交通にみる規制緩和の負の遺産(1)
山下 英次
大阪市立大学名誉教授
公共交通における行き過ぎた規制緩和の弊害が顕著に現れている。規制緩和というと、小泉政権(2001年4月~2006年9月)がすぐに思い浮かぶが、それ以前の自民党政権から始まっており、小泉政権下でピークに達した。過去の行き過ぎた規制緩和の負の遺産が、現在、際立って出ているのがバスとタクシーである。貸切バスは2000年2月に、乗合バスとタクシーは2002年2月に、それぞれそれ以前の免許制から許可制へ移行した。その結果、供給過剰となり、労働条件の悪化とともに、安全への投資が二の次となり、バス事業、タクシー事業ともに疲弊している。
まず、バスからみていくと、許可はかなり簡単に得られるものとなり、その結果、家族経営で、2~3台しかバスを保有しないような零細企業もバス事業に参入するとともに、全体としてバスの台数が顕著に増加した。過当競争となり、格安高速バスなど生まれ、料金は安くなったが、安全面が疎かにされることとなった。記憶に新しいのは、今年4月29日、関越自動車道において長距離バスが防音壁に激突し、多数の死傷者を出した。
また、2007年2月には、大阪府吹田市でスキー・バスがモノレールの高架橋の支柱に激突し、死傷者を出した。いずれの事故も、運転手の居眠りによるものであった。後者の場合、運転手は21歳、誘導員は16歳であったが、家族経営のバス会社であり、それぞれ経営者の長男と三男であった。アメリカでも、バスについては同じような状況のようであり、停留所ではなく路上で乗客を拾うような格安の長距離バス会社が出現し、事故が大幅に増え、近年多くの死傷者が出たと言われる。こうしたことを背景に、米国運輸省は、今年5月、バス業者26社に業務停止命令を下した。
日本のタクシーの惨状は、目を覆うばかりである。規制緩和によって、台数が激増しために、極端な供給過剰に陥っている。世界のどの都市でも、長距離客が期待できる空港などでは、タクシーの長い客待ちの列を見かけるが、日本では、住宅街を走る電車の小さな駅でさえも、タクシーが長い列を作っている。あの光景は、異様であり、日本のタクシー業界が如何に極端な供給過剰状態にあるかを物語っている。(つづく)
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