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2012-07-14 00:00
(連載)アジアにおけるヨーロッパの役割(1)
河村 洋
外交評論家
「太平洋の世紀」という話題になると、アメリカ、中国、日本、ロシア、インド、そしてアジア太平洋地域のその他中小国家ばかりが注目されがちである。しかし域外のアクターでも特にヨーロッパの影響力は無視できない。歴史的に見て、ヨーロッパとアジアは互いに大航海時代以来の深い関係にある。イギリスとフランスのような大国ばかりでなく、オランダ、スペイン、ポルトガルといった中小国もアジアとは長い交流の歴史がある。ヨーロッパはアジアがまさに必要としている投資、知識、ブランド、輸出市場を提供できる。ヨーロッパが積極外交に転じれば、アメリカにも日本にも、そしてアジア太平洋地域のその他の民主国家にとっても、中国やロシアとの地政学的競合や北朝鮮による予測しがたい脅威への対処のうえで非常に心強い。
アジアの台頭によってヨーロッパは影が薄くなるのだろうか?カーネギー・ヨーロッパのジュディー・デンプシー上級研究員は自らのブログの6月27日付けの記事で欧米双方の識者の見解に言及し、欧亜関係を以下のように語っている。人口構成では平均年齢の若いアジアが高齢化したヨーロッパより有利であるが、アジアはナショナリズムの高揚、数多くの領土紛争、経済格差の拡大、そして大規模な環境破壊といった難しい地域的課題を抱えている。ヨーロッパは社会経済開発、人権、統治の改善、科学技術といった面でアジアを支援できる。しかしヨーロッパはアジアで限定的な役割しか果たせないと見る専門家もいる。
多くのヨーロッパ人にとってアジアのパワー・ポリティックスは遠い世界の出来事で、彼らは貿易での関係は強化しても安全保障の関与は小さなもので満足している。そうした全てを考慮すると、ヨーロッパがアジアに対する姿勢には著しく目立つ側面がある。アメリカとは価値観を共有するものの、南シナ海の諸問題やアチェー紛争のようなアジアの危機への対処でヨーロッパは多国間の非軍事的な方策を好む。私にはデンプシー氏のこうしたブログ記事内容が、日本の外交と似ているように思える。政治的価値観と社会経済の発展段階が共通するヨーロッパと日本は、アジアが抱える多様な問題に対処するうえで緊密な関係を築けるかも知れない。
経済的発展が進み政治的緊張が高まるアジアは、グローバル化が進む世界にかなりの影響を及ぼしている。よってヨーロッパ諸国はアジアでより積極的な役割を果たす必要があり、自国だけの内向きの幸福と繁栄に満足してはならない。安倍晋三元首相は「中国の有人宇宙飛行の成功によってはじめて、ヨーロッパの指導者達が中国の脅威に関する問題意識を高めるようになった」と述べている。アジアへの関与を深めるようになれば、ヨーロッパは日米同盟と安全保障上の利益をより多く共有するようになるだろう。(つづく)
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