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2012-07-05 00:00
(連載)日本は期待に応えられるのか(2)
高畑 昭男
ジャーナリスト
例えば昨年の11年版では、中国軍の近代化について「何のために、いかに行使するかが依然不明確」としていた。これに比べて、最新版は「中国は情報集約化された戦闘能力を通じて地域戦争を戦い、かつ勝利することを目的として、長期的・包括的な軍事近代化を追求している」と明瞭に記している。中国軍が領土・領域防衛を超えた遠隔地での作戦能力を高め、空母の航行試験、新型ステルス戦闘機、対艦ミサイル、宇宙・サイバー能力などへの投資も続いているというのがその根拠だ。全体として、これまで「戦略的意図が不透明」としてきたのに比べ、今回は中国指導部が2020年までの期間を「国家発展のための戦略的好機の窓」と位置づけ、「軍近代化をこの戦略達成に不可欠の要素とみなしている」という。
過去のどれと比べても、中国の並外れた軍備拡張が狙いとするところの戦略や意図などについて、かなり明確に指摘していることが最新版の特徴と言ってもいいだろう。片や、冒頭に挙げた米有識者の意識が示すように、通商・経済分野における米中両国の相互依存は深まる一方にみえる。米中ともに、直接的な衝突や対決を避けたいことは否めない。こうした中国の動静が米国だけでなく、日米同盟にとっても新たな覚悟を求めるものであることは言うまでもない。
米国は巨額の国防費削減を強いられ、また日本も財政健全化を迫られている。互いに苦しい財政状況の中にあるとはいいながら、着々と軍事、経済、外交面で台頭を続ける中国を牽制し、抑止するためには、日米が緊密に協力して平和と安定を維持する備えを強化しなければならないからだ。冒頭の対日世論調査では、在日米軍の存在について「米国自身の安全に重要か」と尋ねたところ、一般、有識者とも81%が「重要と思う」と答えた。また、日米経済関係を深めるために日本が進めるべき政策として、有識者の86%が「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加」を挙げていたのも印象深い。
これらの数字は、いずれも同盟や日本に対する米国民側からの一般的な期待を端的に示す数字といえるだろう。だが、問題は日本がこうした期待に積極的に応えようとはしていないことだ。在日米軍の再編は、先の野田佳彦首相とオバマ米大統領の首脳会談で見直しに合意したが、早期実現の見通しは立っていない。経済・通商面で中国の行動を牽制する戦略的意義を持つTPP交渉参加問題も、2年越しの宿題にいまだ結論を出せそうにない。こんなことでは、日本が本来あるべき「頼れる同盟・パートナー」というイメージがますます希薄にならないかが心配だ。(おわり)
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