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2012-06-30 00:00
日韓防衛協力強化は必然の流れ
高峰 康修
日本国際フォーラム客員主任研究員
日韓間におけるGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の締結をめぐり、韓国側の対応が迷走を続けている。昨年1月の日韓防衛相会談で、GSOMIAとACSA(物品役務相互提供協定)に関する協議を開始することが合意され、一旦は、今年5月中にGSOMIAを締結する運びとなった。それを、韓国側から延期の申し入れをしてきた。一転して、6月下旬に入って李明白大統領の決裁により締結が決まったと報じられたが、その数日後には再延期ということになった。韓国側は、国内世論の日本に対する反発を理由に挙げているが、真意のほどはよく分からない。12月に行なわれる大統領選をにらんで、韓国政府内に、安保政策をめぐる足並みの乱れがあるのではないかと推測される。
ただ、GSOMIA締結にまつわる混乱は、長い目で見れば、日韓防衛協力強化の流れに大きな影響を与えるものではない。それは、アジア太平洋の安全保障環境が、ぎくしゃくした関係を続ける余裕を日韓から奪いつつあるからである。日韓の防衛協力強化というと、まず出てくるのは北朝鮮であり、それは確かに間違いではないが、最終的に問題となるのは中国である。韓国海軍は、済州島に拠点建設を始めている。これについての韓国の意図は、一つには、韓国海軍をマラッカ海峡を含むシーレーン防衛をも視野に入れた外洋型海軍にすることであるが、もう一つは、海洋権益をめぐる中国との紛争に備えるためである。中韓は東シナ海北部にある暗礁「離於島」周辺海域の管轄権を争っており、離於島周辺には石油や天然ガスといった天然資源が埋蔵しているとされる。済州島に海軍の拠点を作れば、不測の事態が起こった時に、韓国本土から駆けつけるよりも、はるかに短時間で到達できるというわけである。
日韓は、海上交通の安全確保や中国による領有権主張への対処といった点で、大きな利害を共有している。そして、日韓はともに、北東アジアにおける米国の重要な同盟国である。米国は「アジア回帰」を明確にし、このことは、アジア太平洋地域にとって歓迎すべきことである。日韓の防衛協力強化は、米国の「アジア回帰」戦略をより実効性あるものとし、日米韓いずれにとっても、さらには地域全体にとっても利益となる。このように、日韓防衛協力の推進は、客観的に戦略的観点から見れば、必然的なものである。もちろん、このことは、決して、我が国が歴史問題などで韓国に不当な譲歩をしてでも日韓協力を推進すべきということではない。戦略目標の共有を深めることによって、そうした問題は克服されていくであろうし、そうでなければならない。
そのためには、当面は、世論に左右されやすい政治があまり前面に出るのではなく、現場レベルでの実行を積み重ねて行くのがよいと思われる。また、米国を交えた戦略対話や行動の積み重ねが重要である。再延期という結果にはなったが、李明博大統領によるGSOMIA締結の決裁の背景には、米国からの働きかけがあった、と報じられている。こうした意味で、6月21・22日に朝鮮半島南端沖で行なわれた日米韓の合同海上演習は意義深いものであった。同様の取り組みを重ねて行くべきである。GSOMIA締結により日韓間で軍事情報を交換できるようになるのは、もちろん望ましいことである。しかし、締結延期に過度に失望する必要はなく、機が熟すのを待っていればよい。むしろ、それまでの時間で、我が国自身の情報保護体制を見直すべきであろう。さらに、次の課題としてACSAもある。ACSAは集団的自衛権とも関係してくる。情報保護体制の見直しも集団的自衛権も、もちろん対韓国に限った話ではない。我が国の安全保障にとって避けて通れない問題であるから、早急に対処すべきである。
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