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2012-06-27 00:00
同調者足りず、小沢「新党」にちゅうちょ
杉浦 正章
政治評論家
時に政局は小さな現象が大きな判断の材料になることがある。今回のポイントは造反の頭目・小沢一郎がなぜ本会議場を出るとき、記者団にあえて聞こえよがしに「よし!」と気合いを入れて見せたかだ。その理由を分析すれば、ここは「やる気」を見せなければまずいと判断したからに違いない。「役者やのう」なのだ。マスコミは「造反が多数」と空騒ぎしているが、小沢と共に離党まで考えている議員は40人余りと判明した。この場合「たったの」と付け加えるのが玄人の判断だ。40人では離党して新党を作っても、狙っていたように民主党を少数与党に追い込めないのだ。逆に、新党を作った直後に「小沢証人喚問」を実現させる動きが出てきた。新聞は、当分「分裂」に「事実上」と「状態」をつけた「事実上の分裂状態」という表現をするしかないのが実情なのだ。
過剰な報道に目をくらませされて、見方を誤ってはいけない。追い詰められたのは小沢サイドなのだ。消費増税法案への賛成は365票で、反対は96票だ。75%の衆院議員が国論を割る重要法案に賛成するという政党史上でもまれにみる快挙なのである。反対票のうち民主党の反対は57人で、欠席・棄権が16人。最大限73人の“造反”なのだが、本会議後小沢の下にはせ参じたのは43人にとどまった。問題は反対票を入れた全員が小沢と一緒に離党へと走らないことなのだ。小沢が目指したはずの民主党を少数与党に追い込む54人の離党にはほど遠いのが実態なのだ。さすがに小沢は衆院議員43人、参院議員14人を前にして「今の時点では党を割ったり、新党を作ることは全くない」と、ブレーキをかけざるを得なかった。実は同様の例が過去にもある。1993年宮沢内閣不信任案に賛成した小沢はすぐに自民党を離党することを避け、分裂選挙に突入する構えを見せたのだ。しかし、武村正義、鳩山由紀夫などが自民党を離党し「新党さきがけ」を結成したため、小沢も自民党を離党し「新生党」を結成した。今回はどうするかだが、小沢は記者会見でも、意気込みばかりを前面に出したものの、その実態は「近いうちに判断」と、全く煮え切らない発言を繰り返した。
煮え切らない理由は十分すぎるほどある。まず、43人以上に数が増えるかどうかだが、これはなかなか難しい。議員一人一人にとって今回の投票行動はぎりぎりの選択肢であり、考え抜いた上での決断である。いくら小沢サイドが働きかけても、なびきにくい議員がほとんどだ。“離党者”拡大の展望は全く開けていないのだ。それに加えて、刀を抜いた親分を「待ってくんねえ。何とか致しやすから」となだめるのが、子分の幹事長・輿石東だ。輿石は明らかに除名処分など全く“想定外の外”に置いている。おまけにいつ処分を下すかも決めないまま、ずるずると政局を引っ張る構えだ。輿石に近い党幹部は「小泉さんですら処分は総選挙後だった」と漏らしているという。参院で郵政法案を否決され解散した首相・小泉純一郎は何と3か月後に処分をしているのだ。この輿石ペースに首相・野田佳彦も引っ張られる公算が強い。なぜなら野田にとっても事を急いで処分を断行すれば、43人にとどまっている離党組を増やす原因を作ってしまうことになるからだ。様子を見る必要があるのだ。
こうして民主党内は当分煮え切らないままに推移する。小沢は虚勢を張って、離党をちらつかせながら多数派工作を展開するだろう。参院の審議は自民党の「関東軍」が待ち構えているから、何が起きるか分からない。小沢が「暴れる」きっかけには事欠かない。新党きずなと組めば、不信任案上程に必要な50人以上の数は集まるだろう。小沢は当分党内にとどまり、多数派工作を展開して、野田を追い詰める構えだろう。ところがそうは問屋が卸さないのが、消費増税法案を可決に導いた3党合意の構図だ。野田が「小沢切り」をちゅうちょする姿勢を示していることについて、自民党幹部は「参院審議に響く」と漏らしている。「小沢を切らなければ、参院で消費増税法案の審議に影響する」というのだ。幹部の間には審議拒否の声も生じている。自民党総裁・谷垣禎一も6月26日「重要法案で行動を共に出来ないのなら、党を分けた行動が必要となる。けじめをつけてもらわなければ困る」とけん制した。「事実上の分裂状態」では、自民党にとって不十分なのである。
今後自民党は、小沢問題を盾に、野田に対して決断を迫るだろう。早い話が「小沢を取るか、3党合意を取るか」の図式となる。もちろん裁判中の「小沢疑惑」も活用する。民主党に対して小沢の証人喚問を要求する構えだ。小沢が新党を作って離党すれば、民主党も真っ先に喚問に応ずるだろうからだ。福島の放射能で誰より早く逃げ出した小沢にとっては、2番目に“恐ろしい”のが証人喚問だ。その実現が一段と現実味を帯びることになる。こうして消費税政局は一山越えたものの、前途には一段と険しい山脈が連なる流れとなって来た。野田は究極的には、自民党との「話し合い解散」を選択して消費税を成立させるか、内閣不信任案の成立を受けて解散するか、の2つに1つの選択を迫られることになり得る情勢だ。この結果、消費増税法案を成立させるには、「話し合い解散」か「あうんの呼吸解散」を結局選択せざるを得ない状況へと追い込まれる公算が大きい。
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