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2012-06-21 00:00
メキシコとカナダの参加で価値が高まるTPPの枠組み
高峰 康修
日本国際フォーラム 客員主任研究員
メキシコとカナダが、相次いで、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉に参加することが決定した。すなわち、両国は、昨年11月に、我が国とともにTPP交渉に参加する方針を示していたが、それぞれ、今月18日と19日に、米豪などのTPP交渉参加国9カ国全てからの承認を取り付けた。これにより、米、カナダ、メキシコというNAFTA(北米自由貿易協定)の加盟国全てが、TPP交渉に参加することが決まった。このことは、TPPの枠組みの、政治的・経済的価値を一層高めることになる。
大雑把に言って、NAFTAは、人口約4.5億人、GDP約17兆ドルの成熟した巨大市場である。一方、TPP交渉参加国のうち、シンガポール、ブルネイ、マレーシア、ベトナムといった東南アジア諸国は、今後の世界経済の成長センターと目される、エネルギッシュで有望な新興市場である。また、オーストラリアは天然資源に恵まれたユニークな存在である。TPPは、自由主義、公正なルールの遵守、開放性、透明性といった諸理念によってこれらを結び付ける、文字通り「環太平洋」の壮大な自由貿易の枠組みとしての性格を、より明確にしたといえる。もちろん、TPPは、上述の諸理念に反対する勢力にノーを突きつける意味もある。理想的には、WTO・GATT体制の下に通商上のあらゆるルールが一元化できればよいのだろうが、それは現実的な話ではない。TPPは、その規模からいっても、自由貿易に関するルール作りにおいて、WTO・GATT体制を補完し、理念を発展させることのできる存在であると期待できる。
ところが、極めて遺憾なことに、我が国は、メキシコおよびカナダと同時にTPP交渉参加の方針を示したにもかかわらず、まだ承認を得ることができず、TPP交渉に参加できずにいる。このようなことになってしまっている最大の原因は、やはり、我が国の農業への保護主義的姿勢である。民主党政権の歴代農水大臣はTPPに慎重姿勢であった。もちろん、交渉では、センシテヴ品目の決定が重要な議題となるのだから、一切の自国産業保護がいけない、などというわけではないが、我が国の態度は、真剣さを疑われても仕方がない。また、震災後の我が国の極めて内向きな姿勢も大きな原因の一つであろう。
我が国は、経済規模からいっても、本来的に貿易立国である点からしても、TPP交渉参加がなかなか承認されないことは、我が国自身にとっても、国際的な自由貿易体制にとっても大きな損失である。TPP交渉参加実現に向けて、最大限の努力をする必要がある。それには、当然、政治の強いリーダーシップが必要となる。なお、現在、米国のオバマ政権がTPPにいささか不熱心であるとの指摘がある。これは、オバマ氏自ら打ち出した「アジア回帰」と矛盾し、オバマ政権のアジア太平洋政策に疑問を抱かせる原因の一つである。ただ、選挙の年には、米国は保護主義の方向に振れる傾向がある。選挙が終われば、おそらく、元に戻るのではないかと思う。
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