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2012-06-18 00:00
(連載)太平洋・島サミットの主眼は、海洋ガバナンスと「良き統治」(2)
高峰 康修
日本国際フォーラム客員主任研究員
中国は、太平洋の島嶼国に野放図な資金援助を行い、被援助国が債務超過に陥っている例が見られる。中国の意図は、太平洋島嶼国には台湾と外交関係を持つ国が少なくないので、それらを揺さぶるため、あるいは、海洋資源を狙ってのことである。「良き統治」を打ち出すことは、こうした事態を防ぐ意味もある。ただ、決して間違えてならないのは、単に中国との間で援助合戦を繰り広げるのではなく、こちらは、あくまでも「良き統治」という理念を持つ、ということである。これは、我が国の対外援助の得意とするところであり、これまでも世界各地で被援助国の信頼を勝ち得てきた。太平洋の島嶼国に対しても粛々とそれを続ければよいだけの話である。
また、太平洋・島サミットで取り上げる「海洋安全保障」は、南シナ海や東シナ海におけるそれとは、自ずから意味が異なる。太平洋の島嶼国のニーズを考えれば、要するに、まずは資源管理のための実力が整備されなければならない。軍事的というより、法執行の問題である。ここを飛ばして、「中国とのパワーゲーム」などというのは、ピントがずれている。「沖縄キズナ宣言」では、国際法の重視も謳われたが、中国に対して国際法の重視を訴える意味が皆無ではないにせよ、これも第一義的には資源管理の問題である。
懸念されるのは、太平洋・島サミットを余りにも対中戦略の文脈でとらえる、ピントのずれた評価は、本来必要な防衛力強化から目をそらさせる危険性があることである。日本政府は、海洋ガバナンスと「良き統治」が太平洋・島サミットの主眼であり、対中戦略は従である、という正しい姿勢から逸脱していない。今後とも、この姿勢を貫き、さらには、グローバルな海洋ガバナンスにも積極的にコミットし、リードしていくべきである。国内に向けても、その意図を大いに発信すべきであろう。
ところで、米国は、未だに国連海洋法条約(UNCLOS)を批准せずにいる。UNCLOSが海底資源の取り扱いに関して途上国寄りであるとか、中国がUNCLOSを捻じ曲げて解釈しているので、UNCLOSに入ると米海軍の行動の自由が損なわれるといった反対論が、少数派になったとはいえ根強く残っているからである。しかし、これらは到底説得力のある議論であるとは言えない。太平洋の海洋ガバナンスに深くコミットしようというのであれば、UNCLOSを批准しないのは、いささか説得力に欠ける。もちろん、UNCLOSを批准するか否かは米国の国内問題だが、同盟国として、批准を助言してもよいのではないかと思う。(おわり)
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