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2012-06-10 00:00
強まりつつある日米豪印間の安全保障ネットワーク
石垣 泰司
アジアアフリカ法律諮問委員会委員
中国の軍事力の膨張と海洋進出は、直接間接に周辺諸国に様々なインパクトと対応の変化を引き起こしつつある。南シナ海水域の島しょをめぐる中国とASEAN関係諸国の緊張関係は、周知の通りであるが、米国、日本、豪州、インドも安全保障上の相互対話を緊密化し、さらに共同軍事演習の実施にまで連携を拡大し、強めてきていることが注目される。日本と豪州は、永らくそれぞれ米国と2国間同盟関係にあるが、近年これら3国間の安全保障対話をも緊密化してきており、日米豪閣僚級戦略対話の第4回目を2009年9月実施した。また、日米両国は、インドとの間で安全保障問題を含む共通関心事項に関する高級実務者間協議の第1回会合を2011年12月にワシントンで、第2回目を本年4月東京で開催し、さらに3回会合をインドで開催する予定とされる。
パネッタ米国防長官は、本年6月6日インドを訪問し、アントニー国防相との会談後、ニューデリーでの講演の中で米国が打ち出したアジア太平洋地域を重視する新しい国防戦略を説明し、「東アジアから南アジアにかけての弧を描く地 域に軍事協力やプレゼンスを広げていく方針であり、インドとの防衛協力はこの戦略の要の1つだ」とし、インドとの防衛関係を強化していく考えを明らかにし、インドとしても、米国との関係強化をてこに軍備の近代化を一段と進めたい考えであるという。
さらに、6月9日、我が国海上自衛隊はインド海軍との初の共同訓練を相模湾で実施し、これにはインド海軍の駆逐艦などの艦艇4隻と海自の護衛艦2隻やヘリが参加し、陣形訓練や捜索・救難訓練を行った。 これは、日本とインドが2008年に発表した「安全保障協力に関する共同宣言」に沿って、2011年11月の両国防衛相会談でなされた共同訓練の実施に関する合意に基づくものであるという。杉本正彦海上幕僚長は6月5日の記者会見で「戦術技量の向上と友好関係の促進が目的であり、アジア太平洋地域の安定した条件につながる」と述べ、またアジット・クマールインド東部方面艦隊司令官は、別途取材の記者に「海自との訓練を通じた連携は、海上輸送路の防衛や海賊行為への対応で意義のあるものだ」と述べたとされる。
日米豪間の安全保障上の共同歩調は、同盟関係に基づく強固なものであるのに対し、インドの日米安全保障対話や共同訓練への参加への狙いには自国独自の利益のものもあると思われるが、その背景には、近年における中国のインド洋方面を含む広汎な海域への中国海軍の積極的進出への対抗意図もあるとみて間違いないであろう。
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