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2012-06-01 00:00
「外交青書」と韓国の抗議
櫻田 淳
東洋学園大学教授
読売新聞電子版 4月6日(金)配信記事によると、「韓国外交通商省は6日、玄葉外相が同日、閣議報告した2012年版の外交青書に、日韓が領有権を争う竹島(韓国名・独島(トクト))を日本の領土と記述したことに対し、『不当な主張に深い遺憾を表明する。我々の領土主権に挑戦する、いかなる試みも容認できない』と抗議する報道官の談話を発表した。談話はまた、『日本が誤った歴史認識で独島を自国領土と主張するなら、「未来志向的な韓日関係」は空虚な言葉に終わる』と指摘。『日本は国際社会で責任ある役割を果たすことはできない』と激しく反発した。外交青書は竹島を『歴史的事実に照らしても、国際法上も明らかに日本固有の領土』とし、『問題の平和的解決のため、粘り強い外交努力を行っていく』と記載した」とのことである。
相変わらずの反応である。ただし、韓国サイドがどのように反応しようとも、竹島領有権、日本海呼称、歴史認識に関する日本サイドの対応は、変わらないし、変えてもならない。故に、この件は、日韓関係の業病として長く続く。もっとも、「蒲柳の質」の人物が、養生専一に務め結局は長命を保つことがあるのと同じ理屈で、こうした業病を絶えず認識していることは、日韓関係に惰性や慣れが生じるのを避けることでもある。それ自体は、決して悪しきことではない。
昔日、韓国は、日本にとっては、政治上も経済上もマイナーな存在でしかなかった。日本は、韓国に対して、「上から目線」で接してきたのであり、それ故にこそ、「泣く子」をあやすようにして韓国に相対してきたのである。歴史認識や領土が絡む摩擦が生じた折に、日本が示した対韓姿勢とは、そうしたものであった。韓国からすれば、日本の「反省」が「反省」として映らないのにも、そうしたことに理由があろう。だが、もはや、そういう時代でもあるまい、韓国は、相応の国力を持つ存在になったのであるから、日本も、今後は遠慮なく自らの「国益」を主張すべき段階である。「子供相手のボクシングでは手抜きはするけれども、大人相手のボクシングでは本気で打ち込む」というのと同じことである。その「本気のボクシング」に韓国が耐えられるかは、著者には判断する材料がない。日本は、憲法や外交人員・予算の点で、片手を縛ったままの状態で、対韓関係を含む国際政治のゲームを半世紀以上も続けてきたのであるから、その縛りが解けたら相当に「楽しい」ことになりそうである。韓国は、「普通の国」としての日本を相手にしたことはないのである。
野田佳彦内閣は、外交の面では、「大過なく」振る舞っている。鳩山由紀夫内閣期の外交上の対応が、余りにも禍々しかった故に、野田内閣の「普通の対応」が一層、清々しく感じられるだけかもしれない。武器輸出三原則の緩和は、実に佳き対応であった。自民党が政権を奪回した暁には、前に触れた日本の「縛り」は次々と外していくことになる。著者は、その準備を急ぐように、自民党関係者サイドに提言している。
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