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2012-05-25 00:00
オバマ大統領は冷徹なタフ・ネゴーシエーターである
川上 高司
拓殖大学教授
G8サミットが開催されギリシャ危機が話題になっていたが、その話題もまだ決着がついていないなか続いてシカゴではアフガニスタンに関するNATO会議が開催される。アフガニスタン戦争は2014年には撤退するという予定が定まっており、撤退後のアフガニスタンをどう支援していくかに焦点が移っている。そんな中で注目を集めているのが、アフガンーパキスタン国境封鎖の解除問題である。昨年11月にNATOが誤爆によりパキスタン軍兵士に犠牲者を出したことに怒ったパキスタンは、唯一の国境ルートを封鎖しNATOの補給線を遮断している。NATOは中央アジア経由の補給ルートを代替しているが、パキスタンのルートは距離が短く利便性が高い。
封鎖から6か月経ってパキスタン側も国境の再開にようやく前向きになりNATO会議のザルダリ大統領への招待にも応じて今回はザルダリ大統領が出席している。そのため国境再開は近いと期待が高まっているのだが、肝心のオバマ大統領はザルダリ大統領との二者会談に応じていない。オバマ大統領が会談に応じないのはおそらく再開の条件に納得していないからである。パキスタン側はこれまで国境の通過に際しトラック1台につき250ドルを課してきたが、再開の条件として5000ドルに課金の引き揚げを要求している。さらには道路の修復代としての補償金をも要求しているのである。厳しい経費削減に直面しているオバマ大統領としては法外な値上げに応じるわけにはいかないのであろう。
逆に、これまではぎくしゃくしていたカルザイ大統領との関係は一転して良好になっている。アフガニスタンへの空爆や夜間襲撃作戦をめぐっては停止していてほしいカルザイ大統領と続行するオバマ大統領との対立が先鋭化していた。ところがシカゴ会議では撤退後も40億ドルをアフガン軍の養成に拠出するオバマ大統領の提案が支持され、サルコジ前大統領が早期撤退を主張していたが、フランスも2014年以後も軍の養成に関与すると積極的である。
アメリカの両国に対する対応の違いが鮮明になったが、ここからわかることはこれまでの関係やつきあいに関係なく、アメリカの国益を第1に優先して交渉するオバマ大統領は冷徹なタフ・ネゴーシエーター(手強い交渉相手)である。生半可な姿勢では太刀打ちできないのである。
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