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2012-05-18 00:00
野田、「指示」連発で「輿石政局」にブレーキ
杉浦 正章
政治評論家
出口なしの消費税政局の中で、首相・野田佳彦から幹事長・輿石東に「指示」の連発だ。元代表・小沢一郎との会談準備と選挙制度改革での野党との調整を求めたのだ。加えて、原発再稼働も近く決断するという。幹事長・輿石東の言いたい放題となっている現状を打破して、自らの手にリーダーシップを取り戻そうという反転攻勢に出たのだ。しかし、この政局打開には最終的に「小沢切り」や問責2閣僚の更迭に直面せざるを得ないとみられるが、野田にその覚悟ができているのだろうか。「暗中模索」が実態なのだろう。久しぶりに「指示」という言葉を聞いた。野田がなぜこの言葉を使ったかと言えば、輿石の“独走”にブレーキをかける必要が生じてきたのだ。幹事長が、首相の専権事項である「衆参同日選挙」や「解散先送り」を言い、首相が「幹事長とは齟齬(そご)はない」と“言い訳”をする、といった異常な状態にピリオドを打とうとしたのだ。上下関係を明らかにしておく必要があるというわけだ。逆を言えば「指示」の言葉は、輿石が手に負えなくなってきていることを物語る。
消費税政局は、野田が解散回避で小沢を立てれば、自民党総裁・谷垣禎一が立たず、「小沢切り」を求める谷垣を立てれば、小沢が立たず、という“ど壺”にはまった形となっている。これに小沢一派の輿石が茶々を入れて混迷し、まるで「輿石政局」の様相ですらある。このまま放置すれば、野田は「負けが込んでいる」との印象が強まる一方なのだ。そこで輿石押さえ込みの意味もあって、「指示」の連発となったのだが、まず小沢との会談がどうなるかだ。もともと野田・小沢会談は、輿石が言い始めたことだ。いみじくも筆者が指摘したとおり、野田も17日、 「小沢氏は大局観を持っている方で、消費税増税に絶対反対の立場ではない」との見方を表明した。「ただし、いろんな考えがあると思うので、その考えをお聞かせいただきながら、法案を推進をする立場で協力いただきたい、ということを腹を割ってお伝えをしたい」とも付け加えた。
要するに、小沢との妥協の道を探りたいということだ。ところが、最大の妥協の道は政策にはない。政局だ。小沢にとって何より避けたいのが、早期の解散・総選挙だ。これに野田が言質を与えられるかどうかが説得のカギなのだ。野田が小沢の消費税賛成を取り付けるには、早期解散回避を言うかどうかなのだ。輿石の一連の解散先送り発言も、野田・小沢会談の実現に狙いがあるのだ。しかし、野田にとっては「解散権」は政局を運ぶ唯一無二の武器であり、これを小沢の意向通りに手放せば、野党が猛反発する。衆院は賛成多数で消費増税法案を通すことは可能となるが、参院で可決、成立しない。小沢・輿石ラインの狙いはここにある。つまり参院段階での「継続審議」だ。輿石の「党内融和」の本質は、小沢の戦略への“迂回接近”に他ならない。
しかし、野田は「今国会の成立に政治生命をかける」と言っているとおり、継続審議でも、解散で信を問う動きに出るだろう。そうでなくても野党は、今国会での解散・総選挙実現を目指して目の色が変わってきている。自民、公明両党は、5月16日の党首会談で内閣不信任案や首相問責決議案の提出も視野に、終盤国会に臨む方針を確認している。谷垣は17日、両決議案について「ポケットの中にある。政治生命をかけると言ったことが実現できないなら、考えなければならない」と言明している。消費増税法案は成立せず、問責は成立するでは、まさに野田が憲政の常道として伝家の宝刀を抜かざるを得ない局面となる。野田にとっては、小沢を取るか消費税を取るかの決断をいずれ迫られる構図に変化はないだろう。ぎりぎりの場面で野田が小沢を取ることは考えられず、小沢との会談の指示は最終的な「小沢切り」に向けてのアリバイ作りにあるかもしれない。それにつけても、民主党幹部や閣僚は間が抜けている。自民党政権では大事を進めようとするときには、あちこちから推進論が出て、ムードを盛り上げる戦術に出るものだが、他人事のように黙っている。自分の選挙が怖いのかと言いたい。野田だけに任せず、政権全体が消費増税法案で討ち死にも辞さぬ動きを見せてこそ、野党への説得力が生じ、国民を目覚めさせることができるのだ。
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