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2012-05-15 00:00
野田は電力制限令を避け、原発再稼働で動け
杉浦 正章
政治評論家
政府から関西電力大飯原子力発電所3、4号機の再稼働同意要請を受けていたおおい町議会は、5月14日、11対1という圧倒的賛成多数で再稼働容認を決めた。おおい町長・時岡忍がこれを受けて、再稼働容認に踏み切るのは時間の問題となった。首相・野田佳彦はこの機会を逸してはならない。一気に再稼働へと動くべきだ。再稼働に動かずに、電力使用制限令などを出せば、政権の無責任ぶりを露呈するだけである。憲法が保障する営業の自由、財産権の保障など経済的自由権確保に抵触する。また政府に電力供給を義務づける「エネルギー基本法」を無視する無策内閣として末代までたたるだろう。おおい町議会の論議を聞いて、実に大局観のある論議をしていることが分かった。「日本の活力を取り戻すためにも、現行安全基準で再稼働すべきだ」という発言などは、いまだに「原発は過渡的なエネルギーだ。新エネルギーに転換していかなくてはならない」などと、机上の空論を唱える民主党元代表・小沢一郎に聞かせてやりたいくらいだ。
独自に安全性を検証してきた福井県の専門家委員会も近く、安全性確認の報告書を提出する。野田は先にワシントンで再稼働の是非について、「あくまで地元の一定の理解があるかどうかだ」と述べて、地元の対応を見守る意向を明らかにした。また自分が先頭に立って地元説得に当たる意向も表明している。ここで野田にとって重要なことは、国民への電力供給確保は、憲法ばかりでなく、「エネルギー政策基本法」でうたわれた政府の根幹的な義務であることだ。同法は、国及び地方公共団体の電力供給確保への責務等を明示するとともに、地方自治体には第6条で「国の施策に準じて施策を講ずる責務を有する」と規定されている。要するに、国は責任を持ってリーダーシップを発揮して、電力を確保し、地方自治体を指導しなければならないのだ。自治体は本来「反対」を言える立場にない。一方、電気事業法に基づく電力使用制限令などは、あくまで例外中の例外の措置である。大飯原発が再稼働すれば、関電の抱える問題のすべてが解決するにもかかわらず、使用制限に動けば、政治が自らの立場を放棄するに等しい。
したがって、野田政権には再稼働による電力確保の法的義務が課せられているのであり、そもそも地元の意向を最優先すべき問題ではないのだ。しかも、地元が賛成に踏み切ったのであり、ここは野田自身が他の周辺自治体を含めて、自ら説得に動くべき時であろう。福井県知事・西川一誠もそれを同意の条件としている。周辺の府県のトップは、総じて再稼働に反対である。しかし、政府が再稼働を決定したときの激昂型反発は影をひそめてきた。電力危機の実態がようやく分かってきたうえに、地元財界などからの猛反発を受けて、トーンダウンしたのだろう。倒閣宣言までした大阪市長・橋下徹も元気がない。発言は相変わらずとんちんかんで、「電力制限令をやって電力とはどういうものか身にしみて感じて、どういう供給体制を構築してゆくかだ」と述べた。まるで企業活動の成否や人命に関わる電力制限令を「理科の実験」扱いしている。滋賀県知事・嘉田由紀子はおおい町議会の決定を「まるで出来レースだ」と茶化したが、自らのマスコミうけポピュリズムを棚に上げている。この種の自治体トップは、脱原発と言うより、ポピュリズムに根ざした原発即時破棄論に近く、説得しても翻意はしまい。
しかし、これまで再稼働手続きで失敗を重ねてきた野田には、手続き上説得する義務があり、これまでのように副大臣クラスでことを処理すべきではない。自ら「脱原発だ」と公言する経産相・枝野幸男は、この場面においては信用ができないし、説得力にも欠ける。野田が自ら説得に当たり、その手続きを踏んだ上で再稼働に踏み切るべきであろう。民主党政調会長・前原誠司は「再稼働しなかった場合、計画停電を関西地域はやらなければいけなくなる。これは医療機関などでは人の命に関わる」と発言している。確かに、電力制限令で救急救命センターへの電力供給がストップすれば、たちまち人命に関わる。自家発電など電力確保のすべがない中小企業は、倒産の危機に瀕する。大企業は世界一高い電気料金の日本脱出にますます拍車をかける。失業率は高くなる一方だ。一般家庭は消費増税より一足先に電力料金の値上げという“増税”を食らう。要するに、原発再稼働で確保出来る電力供給を放棄して、安易に電力制限令などに動けば、国の活力の根幹を喪失することになるのだ。野田は消費税に全力投球もいいが、電力確保にちゅうちょしているときではあるまい。それも速い動きが必要だ。再稼働までには準備に1か月かかり、月内に決断しないと、電力需要がピークにさしかかる7月以降に間に合わない。まさに正念場だ。
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