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2012-04-24 00:00
(連載)ロシアは東アジアに何を求めるか明確にせよ(2)
河村 洋
市民政治運動家
しかしロシアの対中関係には懸念材料もある。トレニン氏は政治面と経済面での問題点を述べている。政治的には中国の政府関係者は、バイカル湖が両国の共有遺産だといったようなロシア極東地域での領土について両国関係を悪化させかねないことをしばしば口にする。他方でロシアは尖閣列島と南沙諸島に関しては中立を守り、中国の領有権主張を支持していない。より根本的なことには、ロシアは中国の軍事力増大に相反する感情を抱きはじめている。2006年に中国が瀋陽地区で大規模な軍事演習を行なったことがロシアの反発を招いている。
トレニン氏はアジア太平洋地域での潜在的な脅威について、ロシア陸軍参謀のソココフ中将の「数百万人もの大軍が伝統的な戦闘作戦観に基づいて行動している。明確に言えば、大規模な兵員数と火力を機軸としている」という発言を引用している。経済ではロシアには極東国境地域の開発のために中国資本が必要ではあるが、「中国企業はシベリアの一次産品を搾取するだけで現地ロシア人の雇用機会の拡大には何ら貢献しない」という批判の声もある。ロシアはソ連から人口の半分を引き継いだに過ぎず、労働力不足を補うには中国人労働者が必要である。しかし中国の企業と労働力が大規模に流入するようになると、極東のロシア人の間では土地の占拠と犯罪組織の増大を恐れる声が挙がるようになる。
トレニン氏が述べた政治と経済の問題の他に、私はロシアの自然環境に対する中国の脅威にも言及したい。中国企業はシベリアの亜寒帯林を違法伐採により破壊し、中国でのあくなき木材需要を満たそうとしている。シベリアの広大なタイガは全世界住民の共有財産で、地球環境のうえでもアマゾンの熱帯雨林の劣らず重要である。生物多様性に関しては、ロシア極東地域にはシベリアトラ、アムールヒョウ、バイカルアザラシのようによく知られた固有種が生息している。さらに、地球温暖化対策にタイガが果たす役割も、もっと注目されるべきである。
亜寒帯林の泥炭土壌は、膨大な二酸化炭素を貯蔵している。無軌道な伐採によって温室効果ガスが大気中に放出されてしまうのである。またアムール川がシベリアの森林からの栄養分を海洋生物に運んでいるので、違法伐採によってオホーツク海の漁業にも被害が及ぶ。ロシアが東アジアの安全保障で果たす役割について語る際に、朝鮮半島は重要な場所である。現在、北朝鮮は新しい指導者キム・ジョンウンの下で、国際的な核不拡散体制に逆らっている。歴史的に見ても朝鮮半島はロシア、中国、日本、アメリカによるグレート・ゲームの舞台である。(つづく)
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