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2012-04-15 00:00
(連載)自衛隊の脱軍事組織化を危惧する(2)
加藤 朗
桜美林大学教授
国際平和協力が本来任務となったことは、これまで目に見える形で貢献できる仕事が少なかった自衛隊にとって組織の活性化、隊員の士気向上には大いに役立った。しかし、ここではあえてその問題点を指摘しておきたい。第1は、戦闘集団としての自衛隊の能力の相対的低下である。PKO協力や災害派遣等で、自衛隊に期待される役割は戦闘能力ではなく、後方支援能力である。
槍で言えば、槍の穂(槍頭)ではなく、槍の柄が重要になったのである。災害支援から復興支援まで自衛隊に期待される役割は大きくなるものの、その主な役割は後方支援である。統合幕僚学校には国際平和協力センターが新設され、また内局にも新たに国際平和協力のための部署も設けられた。このまま槍の柄ばかりを長くしてしまうと、槍ではなくなり、単なる棒になってしまうのではないか。
第2の問題は、隊員の意識の問題である。隊員の中には戦闘員としてよりも災害支援や復興支援を自らの天職と心得るものも出始めている。事実、阪神淡路大震災以後、災害復興支援や国際平和協力活動を入隊の動機に挙げるものが多いと聞く。また東日本大震災での活躍で自衛隊に対する国内外の評価が大いに高まった。今後災害復興支援のために入隊を希望する者がますます増えるのではないか。従来から護憲派は自衛隊を軍事組織から国際復興、災害救助組織に改編せよと主張してきたが、現在の自衛隊の組織の変質や隊員の意識の変化をみると、彼らの主張を荒唐無稽と言下に否定するわけにもいかない。
いずれにせよこれらの問題の根源は政府にある。政府は、ある時は対米協力、ある時は対国連協力の名の下に、まるで便利屋のように自衛隊を場当たり的に使ってきた。その原因は、日本政府に自衛隊の国際平和協力を外交にどのように位置づけるべきか、明確な国家戦略がないことにある。自衛隊の国際平和協力はNGOのように人道的見地から行うべきものではない。あくまでも国益や戦略の観点から行うべきものである。そのことを日本政府、防衛省そして自衛隊が熟思しない限り、自衛隊の脱軍事組織化に歯止めがかからず、結果、中国に対する抑止力が低下していくだろう。(おわり)
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