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2012-04-06 00:00
プーチンの大統領復帰後の米ロ関係
岡崎研究所
シンクタンク
ブルッキングス研究所のウェブサイト3月5日付で、同研究所のSteven Piferが、プーチンの大統領復帰によって、米ロ関係は若干ぎくしゃくするが、大きく悪化することはないだろう、と言っています。
すなわち、この問題については以下の5点を考慮すべきだ。つまり、(1)首相時代も実権はプーチンにあり、大統領復帰によってロシアの対米戦略が変わることはない、ただ、(2)プーチンの対米不信は非常に強く、従って、首脳レベルのトーンは変わるだろう。リセットはメドヴェージェフの下でなされた、他方、(3)プーチンは国内政治、経済両面で厳しい状況に直面する。また、これまでと違い、国内に強固な支持基盤がないことを自覚しながら外部世界と向き合うことになり、その影響がどう出るかわからない、しかし、(4)プーチンは金銭に関しては現実的、実利的な面がある。今回の選挙では軍事増強を訴えたが、大統領1期目に石油高騰で収入が増えた時は、金を軍備に使わず、外貨準備と危機に供える基金の積み上げに投じた。つまり、プーチンがバターより大砲を選択するとは限らない、また、(5)今後6年ないし12年大統領を務めるプーチンは、米国に関しては新大統領が決まるまで半年ぐらい待っても構わないと考え、待ちの姿勢をとる可能性がある、と指摘し、結局、米ロ関係に多少揺れはあるかもしれないが、プーチンは米ロ関係をひっくり返すようなことはしないだろうし、米大統領もプーチンと話し合っていけるだろう、と言っています。
論説は、プーチンの大統領復帰が米ロ関係にとってどういう意味を持つか、という設問へのパイファーの答えを述べたものですが、その内、最も重要なのは第1の点でしょう。メドヴェージェフ大統領時代にもロシアの真の政策決定者はプーチン首相でした。つまり、2000年以来、実質的にはずっとプーチンがロシアの最高指導者だったのであり、職責の名称が大統領か首相かというのはあまり意味のないことです。従って、プーチンの大統領復帰で対米関係が変わることなどない、変わるはずがないと考えてよいでしょう。ただ、これはロシアが変わらないということではありません。ロシアは今変化の時期にあります。プーチン流の強権政治への中産階級の不満、プーチンのカリスマの急激な消失、石油・ガスに依存する経済の停滞・脆弱性・非効率性など、問題が山積しており、これを打開しないと「強いロシア」は夢になってしまう状況です。汚職の蔓延や男性の平均寿命が62.8歳でしかないことは、ロシア社会の病理を示しています。
日本人は、ロシアを大きく強大な国、対する日本は小さな島国と考え、北方領土問題について、強大な国に島の返還を哀願しているかのように考えがちですが、これは実態と違います。IMFの2010年のGDP統計では、日本のGDPはロシアのGDPの3.5倍もあります。他方、人口は大体同じであり、ロシアも少子化で悩んでいます。対ロ交渉では、日本は核兵器能力(ただし、日米安保に基づく核の傘はある)を除いて力関係ではずっと優位にあり、ロシアもそれをよく知っていることを考慮すべきでしょう。なお、プーチンは、3月1日外国メディアとの会見で、日ロ領土問題を「引き分け」で解決したいと述べました。2島返還で最終解決をというのであれば、話になりませんが、解決意欲については評価して、日本側が正統な要求は堅持しつつ、ロシアの真意を見定めるために話し合うのはよいことでしょう。
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