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2012-03-28 00:00
保守派も「アフガン早期撤退」を叫ぶ米国情勢
川上 高司
拓殖大学教授
3月11日に起こった米兵によるアフガン市民虐殺は、オバマ政権を揺さぶっている。政権内では撤退スケジュールを前倒しすべきであるという意見と、現状維持という意見で対立が生まれているのである。現在のプランでは、今年9月までに2,2000人を帰国させるものの残りの6,8000人についてはいまだ未定である。国家安全保障担当補佐官のトム・ドニロンは、今年12月までにさらに1万人を撤退させ、2013年6月までには1万から2万人を撤退させるべきだとの「撤退前倒し」論を主張している。
それに対してバイデン副大統領は、もっと大規模に兵士を撤退させて特殊部隊によるピンポイント攻撃を多用していくべきだとの「早期撤退」論を主張している。だがパネッタ国防長官をはじめとする軍側は早急な撤退はかえって危険であるしコストがかさむとして従来路線の踏襲を主張している。NATOの任務の終了は2014年末となっているので米軍だけがさっさと撤退することはできず、オバマ大統領は内外のバランスをとらなければならない。
肝心の世論は早期撤退を支持している。3月7日から11日にかけて行われたピュー・リサーチ・センターの世論調査によれば、57%が早期撤退を支持している。しかも共和党で大統領指名を争っている保守派のニュート・ギングリッチ候補やリック・サントラム候補ですら、「われわれ米軍はアフガニスタンでは異邦人である」「早期に撤退すべきであろう」と撤退論を主張する。現地では米軍の撤退後のアフガニスタンを見越して脱出するアフガニスタン人がパスポートの取得に殺到している上、資産が国外へ流出し始めている。もはや誰もがこの国が国として機能しないと認識しているのである。それでも脱出できる人は一握りの幸運な人々であり、ほとんどのアフガン国民はとどまって生きていかなければならない。
民族対立や宗派対立を抱えたアフガニスタンの将来はこの国の過去を見ても穏やかでないことは確かであり、5月にシカゴで開かれるNATOの会合でどのような話し合いがなされるのか注目が集まる。アメリカではこれから大統領選挙運動が本格化していくが、アフガニスタンの「撤退政策」が大きな争点になりそうである。
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