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2012-03-16 00:00
野田は小沢を論議の場に招致せよ
杉浦 正章
政治評論家
民主党の消費増税論議を煎じ詰めれば、「落選先送りの自己保身組」対「待ったなしの国家財政を考える良識派」の戦いだ。これに、誰も実現出来ると思っていない再増税論まで出てきて、論議は混迷の極みだ。「ボコボコだが頑張る」という首相・野田佳彦は、本当に「ボコボコになる」前に、すべての発火源である元代表・小沢一郎を消費税合同会議に招致して、「財源がどこにあるか」見解を聞いて、説得してはどうか。小沢は「野田は何考えてるのか分かんねえ」といっているのだから、ちょうどよいではないか。逆に小沢がボコボコになる。とにかく、正々堂々と国家財政の在り方を論議すべき場であるというのに、合同会議は近ごろの村議会よりレベルが低い。反対派は、小沢の代弁者丸出しの衆院議員・川内博史が手続き論で会議をストップさせれば、事実上「消費増税凍結法案」となる停止条項の数値化を要求するといった具合だ。とりわけ噴飯物なのは、法案の付則に執行部が「税制のさらなる改革を実施するため、16年度をめどに必要な法制上の措置を講ずる」と、追加増税まで加えた点だ。現在の10%への増税がどうなるかを論ずる場に、追加増税とはまるで、隣が火事なのに、坊主のお経を拝聴しているようなものだ。
その意図が分からない反対派は、懸命になって追及、譲歩を迫っている。しかし執行部は、党内論議をまとめるのに昔左翼政党がよくやった手法を踏襲しているだけなのだ。わざと別の攻撃目標を作って、論議にエネルギーを使わせ、疲れた頃に譲歩するというやり方だ。見え透いた手口で、見え透いた論議を重ねる、鶴田浩二の歌ではないが、まるで「馬鹿と阿呆の絡み合い」だ。野田が最終政治判断で撤回すると言うが、田舎芝居もいいところだ。反対派が、法案付則の停止条項である「経済状況等を総合的に勘案した上で施行の停止を含め所要の措置を講ずる」に悪乗りして、さらなる譲歩を求めている。何を考えているのか分からないが、小沢グループだけでなく、中間派の元国土交通相・馬淵澄夫までが「名目3%、実質2%」の成長率を増税実現の前提として明記することを求めた。これは、はっきり言って消費増税法案を「消費増税凍結法案」とすることに他ならない。名目3%の成長など、91年度に達成されて以後、とんと我が国経済がご無沙汰している数字だ。復興需要があっても無理と言われている。
税調会長・藤井裕久が記者団に「反対だ。出来るわけがない」と述べるのも無理はない。焦点は、最終的には数値導入論と、反対論のせめぎ合いとなるだろう。こうして会議は踊り、とても3日間では終わりそうもない気配が濃厚になった。背景には、小沢の差配がある。自民党政権時代のような料亭政治を復活させて、毎晩のように若手をけしかけているのだから、始末に負えない。チルドレンは、ただでさえ8割が選挙で苦戦とされている中で、消費増税が加わっては落選間違いないという危機感がある。小沢もチルドレンがいなくなれば、政治基盤はゼロとなる。両者共根底は「保身」なのである。野田がここに来てするべきことは、まず自ら会議に出席して、反対派を説得することだ。誠心誠意説得し続けるのだ。3月15日は、賛成派と反対派の双方が動員をかけた結果、何と160人が集まった。野田が出席すれば事実上の両院議員総会並みの数にすることも可能だ。超重要法案である。
場合によっては、党大会に変わる決議機関である両院議員総会を開いてもよいではないか。党員資格停止中の小沢も招致して、公開の場で論議をするのだ。小沢の主張が理にかなっているのか、野田の主張が正しいのか、決着をつければよい。野田は、マニフェストのどこを探せば「財源はどうにかなる」のか質せばよい。小沢は恐らく出席を拒むだろうが、それならそれで、小沢の「政局狙い」の立場を浮き彫りに出来る。野田は、党首討論で「51対49でもやる」と大見得を切った以上、決着をつける意気込みが大切なのだ。いずれにしても反対派は閣議決定までは阻止できないだろう。小沢がグループの防衛相・田中直紀に法案反対の署名をさせれば、野田は待ってましたとばかりに、愚鈍な答弁を繰り返す田中を更迭できる。こんなありがたいことはないのだ。こうしてチキンゲームは小沢にとって状況悪化の流れだ。幹事長・輿石東が最終段階で妥協に向けての調整に出ることも予想されるが、小沢の扇動しすぎで、容易ではあるまい。閣議決定を強行すれば、勝負は延長戦となり、法案の投票段階での造反に移行する。
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