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2012-03-05 00:00
民・自融和の潮流で、小沢孤立
杉浦 正章
政治評論家
与野党党首極秘会談で追い込まれた形の民主党元代表・小沢一郎が、逆襲に出ている。極秘会談に不快感を示して、「新たな政権樹立”を視野に入れている」と述べたのだ。すわ政界再編かということになるが、この小沢発言にはいささかエリマキトカゲ型の虚勢が見られる。その力が残っているのかどうかを分析してみると、とてもそのリーダーシップはない。自民党と民主党の“融和”の潮流が、もう小沢ペースでの政界再編の時代ではなくなりつつあることを物語っている。まず、極秘会談を受けた小沢の発言から分析する。小沢は、首相・野田佳彦と自民党総裁・谷垣禎一の会談について「こそこそ会っても大した結果は出ない」と述べたが、そんなことはない。「大した結果」となっているのだ。政局は会談を織り込んだ状況分析が潮流となりつつある。その分析とは「話し合い解散あり得べし」の流れだ。副総理・岡田克也が、ダムの水が解き放たれたように野党との接触を開始した。岡田は自民党の元官房長官・町村信孝や税制調査会長・野田毅とも会談、調整に入った。一方で、自民党政調会長・茂木敏充は3月4日、「自民党も一定の役割を果たす必要がある。国会を混乱させることが目的ではなく、与野党のさまざまなレベルで政治家が胸襟を開いて話す必要が出てくる」と述べた。
明らかに話し合い解散を念頭に置いた発言だ。注目すべきなのは、この民主・自民両党の間に生じ始めた融和の潮流なのだ。4日のTBS番組でも民主党税調会長・藤井裕久と自民党前政調会長・石破茂が意気投合した。石破が消費税賛成に言及すれば、藤井が話し合い解散賛成を明言するといった具合だ。これだけの動きはだれが見ても「大した結果」ではないだろうか。小沢は「党内はほとんど増税反対」と述べたが、これも間違っている。昨年末の素案の決定に当たっては大激論の末、最後は拍手でまとまったではないか。1月の大綱の閣議決定も何ら反対意見も出ずにまとまっている。むしろ「ほとんどが賛成」であり、小沢発言には“蒸し返し”の意図だけが残る。小沢の最重要発言は「民主党が政権交代の初心にかえることがベストだが、仮にかなえられなければ、安定した政権がどうしても必要だ。そのための方策を考えなければならない」だ。これは明らかに自らの主導で政界再編に動くという意思表示であろう。
しかし、それが可能だろうか。小沢は4月の判決がシロであることを前提にしなければ行動が不可能だから、それを前提とする発言なのだが、裁判の結果の如何に関わらず小沢主導型の政界再編は極めて困難と見る。野党から総スカンを食らっているのは、昨年9月の小沢裁判が始まる以前からであり、例え無罪であっても、その状態に戻るだけだ。「疑惑」は残ったままとなるのだ。野党からは「無罪なら正々堂々と証人喚問に応じてもらう」(自民党幹部)という声が出ているのだ。このように小沢の発言は論理破たんが激しいものとなっている。要するに、窮鼠が猫をかんでいるだけなのだ。さらに重要なのは、小沢が大きく政局の読みを間違っていることだ。消費税に関して「改革なくして、増税なし」「福祉なくして、増税なし」「景気回復なくして、増税なし」と独自の「増税3なし」論を主張しているが、肝心の財政再建に目がいっていない。かつて小沢は竹下政権で消費税導入論、細川政権で国民福祉税導入論、自らの著書で10%消費税論を主張してきた。完全な増税による財政再建論者のはずだが、それが急きょ反対に回ったのはどうしたことか。消費税を政局に“活用”しているとしか思えないのだ。
「数による政治」論者の小沢は、チルドレンの数100人余りだけが頼りであり、連日飲ませたり、説得したりで、“つなぎ止め”に懸命だ。これに対抗するかのように執行部側も、合法的なチルドレン「買収」の動きを開始し始めた。日経によると、当選1回の新人議員と個人面談して、1人あたり300万円の「活動費」も支給するというのだ。もちろん面談の内容は、消費税に賛同するかどうかが中心。最初は300万円渡すが、面談の結果によっては以後100万円から300万円まで幅を持たせるというのだ。誰が考えたか知らないが、この造反封じの「札束ほっぺた」作戦は、選挙資金枯渇を嘆くチルドレンには大きな影響を与えそうだ。というのも、最近の小沢もどうも資金枯渇のようなのだ。1月16日に党大会の向こうをはってチルドレンを集めたときは、野中広務によると一人20万円しか渡せなかったというのだ。新党といっても、資金がないのではないか。党執行部も露骨なことをやるものだと思うが、効果的であることには間違いない。これに親小沢の幹事長・輿石東がかんでいるとすれば、輿石までが小沢離れということになる。政党資金の配分は幹事長の了承抜きではあり得ないからだ。
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