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2012-02-12 00:00
(連載)特異すぎるアメリカ的価値観(2)
山下 英次
大阪市立大学名誉教授
2003年3月に始まったイラク攻撃は、わざわざ、イラクまで蜂の巣を突きに行ったようなものであり、大いなる愚行である。当時、小泉政権の日本政府は、イラク攻撃を支持し、それに公然と反対した当時の駐レバノン大使(天木直人)を退任させることまでした。筆者も、アメリカのイラク攻撃直前に、月刊誌『発言者』の2003年1月号と2月号の2回連載で、「今度こそ〈戒米同盟〉を結成せよ―米国のイラク攻撃を阻止せよ」と題する論文を発表した。その中で、「米国の言っていることは戦争口実にすぎず正当化できない。そのような状況下で武力攻撃をすれば、イスラーム教徒の大きな怒りを買い、中東に大変な事態を招く。そうした状況を回避するために、日本と英国は、独仏に加わり、イラク攻撃に反対し、米国の行動を阻止すべきである」とったような趣旨の主張を行った。
いまとなっては、天木元大使や筆者などイラク攻撃反対論の主張が正しく、日本政府が間違っていたことは、誰の目にも明らかである。当時、川口順子外相以下外務官僚は、独仏両国とは異なり、米国の戦争口実を真に受けて、イラク攻撃を強く支持する論陣を張ったが、なぜそのような大きな過ちを犯すことになったのか、国として検証する必要がある。日本の国会は、その役目をしっかり果たすべきである。
現在、米国のイニシアティブで、対イラン制裁強化が進められているが、これも果たして妥当なのであろうか?昨年11月の国際原子力機関(IAEA、事務局長=天野之弥)の報告書が核開発疑惑の根拠とされているが、現在のIAEAはかなり米国政府に偏り過ぎているのではないだろうか。エジプト人のモハメド・エルバラダイ前事務局長時代のIAEAとはかなり姿勢が異なる印象がある。ちなみに、ワシントンの科学・国際安全保障研究所(ISIS)は、今年1月25日、イランの核開発は、それほど差し迫ったものではないとし、IAEAとは異なる判断を示している。
イラン中銀と取引のある銀行に制裁を加えるとする米・国防権限法(昨年12/31成立)やEUによるイラン中銀口座の凍結といった措置(今年1/23決定)、さらに米国によるイラン資産の凍結(今年2/6決定)は、限りなく戦争行為に近いものであり、いたずらにイランを刺激することが、この時点で果たして妥当なのかどうか疑わしい。イランの激しい反発を契機に、中東情勢が一層緊迫するといった事態にならなければよいのだが・・・。アメリカは、この20年間ぐらい、経済政策、外交・安全保障政策ともに、政策判断上の重大なミスを繰り返しており、今度こそは正解だと信じることは難しい。正直に言って、この20年間ぐらい、米国が採用した大きな政策の中で、これは成功であったというようなものを、筆者は一つも思い起こせないのである。(おわり)
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