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2006-07-17 00:00
登録制度の再定義の必要性に同感
石垣泰司
東海大学法科大学院教授
7月12日付け「CEACコラム」所載の「外国人政策見直し:登録制度の再定義必要」と題する井口泰氏の論説は、今日急務となっている我が国の外国人政策の見直し作業について「省庁間の考え方の違いは依然として大きく、『縦割り行政』の改革に踏み込む意欲が不足している」と指摘し、とくに外国人登録制度の再定義が必要であるとの提言を行っている。
私も、以前出入国管理行政に携わったときの経験から、我が国の外国人行政が出入国管理や外国人登録は法務省、査証は外務省、就労は厚生労働省、犯罪対策は警察庁などと縦割りとなっていて、相互間連携が必ずしも円滑でなく、オールジャパンの実効的システムからは程遠い実情にあることを痛感してきた。その改革ためには、我が国においても新たに外国人行政庁の設置を提案する向きもあるが、そのような新官庁の設立は、行政改革の流れに逆行するのみならず、関係省庁の権限保持に固執する日本の行政組織の実情からは単に屋上屋を重ねることに終わりかねないので、より現実的実際的措置として、これら関係省庁間における外国人行政の共通の土台として、外国人登録制度を再構築することが極めて重要であり、そのための制度改革に取り組むべき時期にきているのではないかと考える。
周知の通り、外国人登録制度は、外国人についての戸籍制度や住民台帳制度がない今日、外国人の出入国および居住・在留・身分関係を外国人行政関係当局や雇用主等一般関係者が簡便に掌握しうる唯一の手段となっているが、これまでの諸改正により改善は施されてきているものの、依然不備な点が少なくなく、とくに外国人が転居や勤務先の変更をしても次回確認申請期日がくるまでは変更登録をしないでもすむ仕組みとなっているため、不正確な登録内容のまま運用され続けていることが大きな難点となっている。
従って、井口氏が外国人登録制度を「外国人関係の行政事務の基本となる台帳としての性格も併せ持つよう再定義する必要がある。これをベースに、関係省庁が情報の共有化を図ることにより、情報の精度を高めるようにすべきである」と述べておられるのは、まさに正しい方向の提言であり、我が国における外国人政策見直しの第一歩として早急に取り組むべき改革であると考える。そのためには、在留外国人においては住所の変更等当初の登録内容に変更を生じた場合には遅滞なく届け、更新を受けるよう義務づけるとともに、外国人行政関係諸官庁・地方自治体においてもこれをそれぞれの所掌事務処理上活用しうるよう、省庁横断的基本制度として新たなシステム作りに取り組むべきであろう。
そのような制度が整備されてはじめて、雇用・労働基準行政と出入国管理行政との連携や出入国管理行政と警察、地方行政等との連携も可能となるべく、さらには、低い技術・技能レベルの外国人労働者の受け入れの拡大、外国人技能実習制度の修了生への正規就労資格付与のための仕組み、東南アジア諸国とのEPA協定による一定範疇の労働者の受け入れ、といった措置の実現のための制度的受け皿の基盤がようやく整うことになろう。
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