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2012-02-03 00:00
石原伸晃は、まず“ハーメルンの笛吹き男”を戒めよ
杉浦 正章
政治評論家
自らの政治信条があるならば、自民党幹事長・石原伸晃がとるべき道は自ずと見えてくるはずだが、その言動は「かったるい」の一言に尽きる。父親石原慎太郎の「新党」結成への動きを止めることもできずに、マスコミ向けに批判していて、どうするのか。そもそも大政党の幹事長たるものの置かれた立場を理解していない。「石原新党」が出来て、たとえ数人でも自民党からこれに参加すれば、責任をとって幹事長を辞任するのが、憲政の常道であることを知らない。「日本は最低でも、核装備のシミュレーションをやるべきだ。私が新党に参加するなら、必要条件の一つにする」と、もともと核武装論者の石原慎太郎が、新党綱領の条件として核武装シュミレーションで世界を“脅迫”することを主張している。社民党党首の福島みずほが、就任以来一つだけいいことを言ったとすれば、それは「石原新党と大阪維新の会の連携は、古いファッショと新しいファッショが手を結ぶことだ。本当に危機的な状況だ」であろう。慎太郎という政治家は、後期高齢者特有の「短絡傾向」が最近とみに著しくなっており、一国の宰相としてもっともふさわしくないバランス感覚欠如の傾向を示している。もちろん自民党立党の綱領とも著しく異なっている。
石原家の親子関係がどうなっているかは知らないが、おそらく専制的な父親の下、滅多に口答えできない環境で育っていることがうかがえる。しかし、現在の事態は、大政党の幹事長たる立場と父親との親子関係を当然切り分けなければならない水域に到達している。それにもかかわらず、せいぜい父親に向かって“遠吠え”するばかりである。石原伸晃は1月31日午前の記者会見で、新党構想について「ひとの財布に手を突っ込んでお金を取るといっているのと同じだ。わが党所属議員がそうした行動に動くべきではないと断言する」と発言しているが、これは直接父親に向かって諫めるべき話ではないか。記者会見で他人事のように言うべきことではない。それどころか石原伸晃は、愛知県知事の大村秀章に「親子で戦うことになった真田幸村のような心境だ」と漏らすと共に、「親子で戦った場合はおやじをよろしく頼む」と述べた。なんと父親との連携・協力を要請しているのだ。父親が息子の立場を全く考慮せずに、仕掛け人・亀井静香の誘いに乗って年寄りの冷や水を呑もうとしているのに、息子は「父親を助けよ」と自民党を除名した知事に頼む。これは幹事長としては口が裂けても言ってはならない言葉だし、まじめな党員から見れば辞任に値する。
新派大悲劇で言うなら、父親に対して逆に「私の立場を考えてください。場合によっては首相になれるかも知れないときに、あんまりではありませんか」と泣いてすがりつく場面だ。要するにお坊ちゃま育ちで、タレント出身の伸晃が大政党の幹事長として、「大丈夫かい」という状況に置かれていることを、自分自身が認識していないのだ。大阪維新の会の知事・市長選圧勝で、東京、大阪、愛知の首長らが、中央政界へ向けて“盛り”がついてしまった感じだが、何か日本中がドイツの民間伝承ハーメルンの笛吹男たちに騙されているような感じがする。東京の後期高齢笛吹き男から、愛知の国政賞味期限切れ笛吹き男。そして大阪のタレント系笛吹き男の笛に踊らされているのだ。同じ維新でも、明治維新とは何であったかといえば、国を挙げての外交・安保論争であった。これに対して、大阪維新の会が緊張感に満ちあふれた国際情勢を語ったとは聞かない。沖縄普天間の解決策を示したとも聞かない。国政をつかさどるつもりなら、派手なパフォーマンスは必要ない。
外交・安保、財政・経済で確たる信条を語るべきだ。半世紀も前から語られている道州制の亜流のような主張を繰り返すだけで、国政がつかさどれるのか。千葉県の森田健作が2月2日、石原新党構想について「地方の知事が連携して国を変えようと主張しているが、国を変えるのは国会議員の仕事。本末転倒ではないか」と発言している。別に地方の首長が、国政を論じてはいけないなどと言うべきではないが、本質が政界再編への“風”と“勢い”頼みでは、政権を取ればすぐに馬脚を現す。もしそれで政権が出来れば、確定的に民主党政権の繰り返しとなる。いいかげんに、有権者はあちこちで現れた笛吹男にだまされ続ける政治レベルを脱すべき時ではないか。もっと自らのガバナビリティー(被統治能力)を高めるべきだ。民主党政調会長代行・仙谷由人が、大阪市長・橋下徹について「英雄待望論みたいなもので、この時代を乗り越えていけるのか」と切り捨てているが、その通りだ。有権者は冷静に見極めるべきだ。石原伸晃は父親の笛をまず取り上げることが出来るかどうかで、政治家としての力量を試される。
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