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2012-01-29 00:00
イラン制裁の舞台裏
川上 高司
拓殖大学教授
アメリカは各国に対してイランからの原油の輸入停止を求めている。イラン経済を支えているのは原油の輸出であるから、原油の輸出が止まればイラン経済への打撃はかなり大きなものとなるはずである。経済が困窮すれば国民の怒りが政府に向かいやがて反政府運動が盛り上がり政権が転覆するかもしれない。そんなに単純にものごとは運ばないであろうしオバマ大統領がそれを期待しているとは思えないが、このイランへの制裁はそれぞれの思惑が絡んでいて興味深い。
アメリカ側の事情からみれば、このイラン強硬姿勢は明らかに大統領選挙向けである。共和党の大統領候補は予想通りおそらくミット・ロムニーである。ロムニーが対抗馬の場合、オバマ大統領は苦戦を強いられる。特に焦点の経済問題では、実業家としての経験を売りにしているロムニーに負ける可能性もある。そこで評価の高い外交政策で「イランの核開発を止めた」としてポイントを稼ごうという目論みがある。また、イラン攻撃を本気で考えているイスラエルをなだめるためにもアメリカは強硬姿勢を見せて暴走を食い止めなくてはならない。
イランの側から見れば、イラン制裁に対抗するアハマデネジャド大統領の強硬な発言は、イラン国民向けのパフォーマンスと自身の生き残りのためとも解釈できる。ペルシャ帝国以来歴史あるイランの国民にとってアメリカの脅しに屈することは決して許容できるものではない。アハマドネジャド大統領がアメリカに妥協しようものなら国民は反米で団結して過激な行動に出るかもしれない。また最高指導者であるハメネイ師に、かねてから犬猿の仲であるアハマドネジャド大統領を攻撃する格好の口実を与えることとなりアハマドネジャド大統領にとっては政治生命の危機となる。イランもアメリカもお互いに苦しい国内事情を抱えていて強硬姿勢を見せてはいるが、要はどこで妥協するかである。結局は双方の顔が立つ妥協点に落ち着くのであろうが、最初から結論ありきの外交ゲームに振り回される側はたまらない。
中国とロシアはそもそも制裁には反対している。ロイターによればEUは制裁を決定しているが、ギリシャ、イタリア、スペインはイランからの原油の輸入は当面継続するとし制裁発動の猶予期間を要求している。ユーロ危機の最中にあるこれら3国は、イランからの輸入をやめたらますます危機が深まりユーロ崩壊を招きかねないと暗にプレッシャーをかけているのである。自ら招いた経済危機を逆手にとって自国の利益を追求するその外交姿勢はさすがにしたたかで見事である。日本の安住財相はアメリカの経済制裁にあっさりと同調姿勢を表明した。しかし、アメリカもイランも自国の都合で行動しているのであり日本は振り回されてツケだけが残るという可能性もある。情勢を見極めて冷静に判断すべきであろう。
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