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2011-12-22 00:00
米国のアジア貿易政策における戦略性欠如
岡崎研究所
シンクタンク
ウォールストリート・ジャーナル10月26日付でCenter for a New American SecurityのRichard Fontaineが、米国は対アジア貿易政策において戦略的に中国に後れをとっており、自由貿易協定の締結にもっと積極的になるべきだ、と論じています。
すなわち、米国は先週、米韓を含む3つの自由貿易協定を承認したが、これまで貿易拡大で指導力を発揮することに失敗しており、その悪影響が経済面のみならず戦略面にも出ている、特にビジネスが重要なアジアでは、1.米国の貿易政策はアジアにおける米国のプレゼンスの指標でもあり、また、2.中国が多くの国の主要貿易相手国になっていることから、米国が自由貿易への関与を拡大することが望まれている。しかし、米国がこのまま貿易面で消極的な態度を続けると、米国抜きで地域内貿易取り決めが網の目のように出来ることになろう。外交評議会の報告によれば、アジアでは既に300以上の貿易取り決めが締結されたか、交渉中だが、米国はそれに含まれていない。もっともこれ自体は米国にとって明白な戦略的脅威ではない、ただ、中国は既にASEAN、シンガポール、パキスタン、ニュージーランド、チリ、ぺルー、コスタリカ、さらには台湾とさえ取り決めを結んでおり、北京がこれらを外交の一部として積極的に利用しているのは明らかだ、オバマ政権がアジアにおける貿易協定の拡散に無関心な態度をとることのコストは拡大しつつあり、対アジア貿易政策は見直す必要がある。もっとも、オバマ政権は来月のAPECでTPPの枠組みを発表したいとしており、その動きは既に始まっているかもしれない、と言っています。
この論説はTPPが主題となるAPECホノルル会議前のものですが、日本の貿易政策にも当てはまる論点を提起しています。自由貿易が貿易を行う双方の国に利益をもたらすことは、経済理論的にもはっきりしており、国内調整は大変ですが、国家全体の利益を考えれば、推進しない選択はあり得ないように思われます。実際、自由貿易協定が雨後のタケノコのように出現しているアジアで自由貿易に消極的な態度をとれば、日本の企業が競争上不利な立場に置かれることは目に見えています。自由貿易圏内の国への企業の移転も生じ、国内での雇用が失われることになるでしょう。
また、米国が自由貿易を推進する観点からアジアへの関与を深めることは歓迎すべきことです。特に中国がアジアで経済的影響力を強める中、日米はそれが政治的影響力に転化し、アジア諸国が冷戦当時のソ連に対するフィンランドのような立場になってしまわないようにすることが肝要でしょう。李大統領が言うように、FTAには経済を越える意味があるというのは、その通りです。ただ、論説も指摘するように、自由貿易は、アジアにおける米国の軍事的プレゼンスの代替にはならないので、これはまた別にしっかり考える必要があります。
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