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2011-12-08 00:00
野田は“3重苦”で「姑息のどつぼ」にはまった
杉浦 正章
政治評論家
根本的な解決をしないで一時しのぎをすることを「姑息」というが、最近の首相・野田佳彦は「姑息のどつぼ」にはまった感が濃厚だ。閣僚への問責決議、消費増税、普天間移設問題の“3重苦”を抱えて、対応が本筋を外しているのだ。臨時国会終了後は、自ら選んで“五里霧中”の海域に突入してゆくようでもある。姑息の第1は、12月9日上提される問責決議案への対応。同決議案は、防衛相・一川保夫と消費者相・山岡賢次に対して行われるが、一川は確実に可決され、山岡も可決の方向だ。野田は両相を「襟を正して職責を果たしてもらう」と一応擁護の姿勢をみせている。しかし、一院の意志として閣僚の存在を否定したものが、例え法的拘束力がないにせよ、放置して済むものではあるまい。野田は昨年末の2閣僚問責可決後の経緯をつぶさに見て分かっているはずだ。
放置すれば「不退転の決意」で望むはずの消費増税をめぐる与野党協議が動かなくなる上に、通常国会も冒頭からの空転が避けられない。その前の日程協議にも野党は応じまい。一番よいのは2閣僚が自ら辞任してくれることだが、それもしそうもない。そこで姑息なる小幅改造説が野田周辺から台頭しているのだ。改造の形で「死に体2閣僚」を切るというのだ。改造なら自らの任命責任を直接的に問われないし、小沢一郎も黙認するだろう、という思惑も見え隠れする。その消費増税も、野田の発言は勇ましい。年末までに時期と上げ幅を決定しようとしている。その内容は2013年秋以降にまず税率を7~8%に引き上げ、15年以降に10%にする案が有力だ。これに対し、増税反対に凝り固まっている小沢が「待った」をかけている。小沢は7日グループの会合で、出席者約40人を前に「財源が足りないから消費税率を上げるというのでは国民は納得しないし、次の選挙では支持されない」と真っ向から反対の意思を表明した。同グループは近く増税反対の署名活動を始める構えだ。
こうしたなかで出てきている構想が、消費増税法案に景気に配慮して凍結できる条項を盛る構想だ。野田が、消費増税法案に景気が悪ければ増税を中止できる「景気条項」を盛り込む方針を固めたというのだ。もともと 政府・与党が6月に決めた「社会保障・税一体改革成案」に増税の前提として「経済状況の好転」と明記されており、その線上にあるものだが、明らかに小沢ら反対派を意識した対応だろう。妥協をほのめかしつつ成立を図る、という姑息な手段であり、いったん成立してしまえば「行け、行け、どん、どん」となるのは目に見えている。普天間移設問題も、オバマに公約した年内の環境評価書提示も、実態は手続き論であり、県知事がこれに応じて辺野古埋め立てを認めることはもはやあり得なくなった。それでも年内提示にこだわるのは、米議会もにらんだその場しのぎでしかない。
度重なる民主党政権の失政で、沖縄は県ではなく「沖縄国」の様相を呈しだした。それももっとも精力的な「首脳外交」を展開しなければ微動だにしない状況に陥っている。このままでは流れは「普天間固定」であろう。したがって、事務手続きを行うこと自体が本質的解決につながらない時間稼ぎの姑息な手段となっているのだ。野田はこれほどの重要懸案を抱えながら、訪沖しようとしない。一川などを訪沖させても、現地を激高させる効果しかない。この自ら動かない傾向も、野田政治の特色だ。小沢が消費税反対を述べるなら、小沢と会談して説得すべきだ。党員資格停止中の人間に首相が手も足も出ないのでは嘆かわしい。小沢の方から「野田君が会いたいというなら、別に僕は拒まない」と言われている始末だ。消費税をめぐっても、与野党協議もさることながら、テーマが大きい。自民党総裁・谷垣禎一や公明党代表・山口那津男に党首会談を持ちかけて、堂々とイニシアチブを取るべきではないか。手練手管はすぐに見抜かれることを忘れない方がよい。
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