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2011-12-07 00:00
日本企業を狙うのは「ヤクザ」ばかりではない
田村 秀男
ジャーナリスト
オリンパスから千数百億円もの資金が指定暴力団山口組を含む犯罪シンジケートに流れたと日本の捜査員たちが確信している。こんな内容を、11月17日付米ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。オリンパスの損失隠し問題を調査している第三者委員会(甲斐中辰夫委員長)は否定しているが、最初の告発者であるウッドフォード元社長は25日の東京での記者会見で「今日は、証拠はない」と微妙な言い回しだ。国内メディアは「ガセだ」と見る記者もいるが、英フィナンシャル・タイムズ紙など海外のメディアはその線でフォローしている。
実は在京米政府筋と米連邦捜査局(FBI)は損失隠しが表面化する前から、同社への暴力団の関与について克明に調べてきた。日本のビジネス界全体が留意すべきは、米政府が重点的にオリンパスに限らず日本企業の組織暴力団と企業のつながりや裏金ルートを、10年以上も前から執拗に追及していることだ。オバマ大統領は7月、「国際的組織犯罪に関する新戦略」を発表し、国境をまたいだ犯罪で収益を上げる犯罪組織に金融制裁を科す大統領令に署名し、日本の「ヤクザ」などを制裁対象に指定した。ワシントンは同戦略を、反テロ戦争の延長上に位置づけている。麻薬取引、資金洗浄など犯罪シンジケートの常套手段は国際テロ組織の活動と重なることを重視したからだ。「新戦略」では、日本のヤクザは舎弟企業をてこに建設、不動産、金融など合法的なビジネスに浸透し、表社会の企業を取り込み、巨大な収益を挙げていると分析している。米政府はオリンパス事件をそんな文脈からとらえ、いわば氷山の一角と判断しているかもしれない。
日本企業が気を付けるべきは、ヤクザに限らない。他国の犯罪シンジケートも同様だ。「新戦略」では、ヤクザのほか、イタリアのナポリを拠点とするマフィア組織「カモッラ」、メキシコの麻薬密売・武装組織「ロス・セタス」、旧ソ連圏を拠点とする犯罪組織「ブラザーズ・サークル」を警戒の重点対象として列記している。中でも、ロシア・マフィアはロシアに進出してくる日本など外資系企業に食い込みを図っている最強シンジケートだ。米企業が巻き込まれていなくても、米国以外の地域であっても、米政府は関係国政府とともに捜査、調査に入る方針だ。国際的犯罪組織がグローバル化しているからであり、新戦略は捜査当局の2国間および多国間協力を強調している。
超円高を生かして、外国での企業買収や投資攻勢をかけている日本企業は自身で気がつかなくても、米当局に現地での犯罪組織との結びつきを突如指摘されて、あわてるケースになりかねない。参考になるのは、国務省の国際組織犯罪の米経済および安全保障への影響評価専門家が米企業に配布している指南書「暴力団への対処の仕方-組織犯罪に汚染された市場でのビジネスのリスクとコストを最小限にするテクニック」である。字数の関係で詳細は省くが、原則は、「企業は何よりも毅然とした態度を示せ」だという。以て瞑すべし、である。
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