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2011-11-29 00:00
日本のアジア太平洋自由化構想を発信せよ
山澤 逸平
一橋大学名誉教授
日本のTPP交渉参加への道筋は、野田首相が決断し、ホノルルAPECで参加表明したことで一応つけられた。TPP交渉参加の是非論で、「米国に引きずられての参加」と批判されたが、野田首相はホノルル会議からの帰国時に日本はアジア太平洋の自由化へ主導権を取ると言明した。中国が入らないTPPと米国が入らないASEANプラスをどのように繋げてゆくのか。国内外に日本の戦略を明言すべきではないか。私は中国、米国の双方が参加しているAPECをつなぎ役として活用すべきであり、それには昨年横浜APECを主催した成果が役立つと思う。
TPP,ASEANプラス、日中韓の動きには競争的自由化(FTA結成の動きが他国の参加を促し、ないしは他のFTA結成を誘う)の力学が働いている。野田総理はこれらを並行して進めてゆくつもりのようである。横浜APECビジョンではそれらをFTAAPへの道筋として位置付けている。しかしアジア太平洋地域では先進エコノミーと発展途上エコノミーの間で、貿易投資自由化受け入れ態様も異なり、各エコノミー内での関心分野への執着も錯綜しており、容易にFTAAPへ収斂できるとは思えない。収斂する方向へ導く努力が不可欠である。私はAPECがその収斂の枠組みとなりうるし、日本が音頭取りを表明すべきだと提案したい。
昨年の横浜APECでは個別自由化・円滑化のボゴール目標達成の中間評価を発表した。過去15年間APECエコノミーは高度成長を達成して世界経済を牽引したが、それには自由化円滑化のボゴール目標が役立ってきたこと述べたうえで、なお関税、非関税障壁、サービス、投資、知財権、政府調達の6分野でなお障壁を残していることを指摘し、ボゴール目標の残りの10年で、なお撤廃努力を続ける必要があると指摘した。ホノルル閣僚声明の冒頭に、21エコノミー全部が2020年に向けて残存障壁を撤廃する「新IAPピア・レビュー・プロセス」の実施を指示している。APECは自発的で非拘束の原則を維持すべきだが、ピアレビューの実効を高めて2020ン円までに残存障壁を撤廃し、国内規制や次世代貿易投資措置にも取り組んで、ボゴール目標を達成しなければならない。発展途上エコノミーも揃って達成するには各種の能力構築が不可欠だが、APECはそのための技術協力プロジェクトを積み重ねてきた。APEC自体がFTAAP達成の基盤になるのである。TPPとASEAN+はアジア太平洋を上から引っ張るが、APECはそれを後ろから押し上げるのである。
またAPECは米国も中国も参加しているので、TPPとASEANプラスのつなぎ役になる。日本はこれまで積み上げてきたAPECでのイニシャティブを最大活用して、アジア太平洋の自由化の推進の中心にならなければならない。
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