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2011-11-25 00:00
解散への最大の武器は問責可決だろう
杉浦 正章
政治評論家
案の定「話し合い解散」の石原伸晃発言に対して、「幹事長失格」(伊吹文明)と厳しい反応が自民党内で生じた。「軽い」のだ。それはともかくとして、自民党は「解散」要求の掛け声だけは高いが、問題は嫌がる馬を水辺でいかにして水を飲ませるかにある。首相・野田佳彦は自殺行為に等しい「消費税解散」を避けるため、最後までじたばたするだろう。マスコミも自民党執行部もまだ解散への道筋を全く読めていないが、結局最大の武器は参院における問責決議案の可決しかあるまい。まず今後の政局の鳥瞰図を描くと、次のようになる。野田は焦点の消費税増税案を年内にまとめて、準備法案として来年3月末までに国会に提出する。一方、今臨時国会は終盤で一挙に対立が盛りあがり、おそらく消費者相・山岡賢次の問責決議案が可決されるだろう。山岡は辞任を拒否するが、可決されれば、遅かれ早かれ辞任に追い込まれるだろう。これが野党による政権攻撃の突破口となる。
通常国会では、冒頭から解散をめぐって対決ムードとなる。来年度予算案は衆院を多数で通過し、成立するが、問題は予算関連法案だ。野党は、予算を裏打ちする特例公債法案を人質にとって、野田を追い詰めようとするだろう。昨年の菅直人政権への攻勢と同様の手順だろう。菅は3.11大震災があって生き延びたが、通常の場合は予算関連法案が通らなければ、政権は退陣か、解散かの、ぎりぎりの段階まで追い詰められる。しかもその最中に野田は消費増税準備法案を提出するのだ。これはまぎれもなく3月危機であろう。ここで野党は、解散・総選挙に直結する手段を講じなければならない。一番手っ取り早いのは内閣不信任案の可決だが、衆院においては圧倒的に与党が多く不可能だ。総選挙恐怖症の小沢一郎も今度は賛成に回ることはないだろう。成立させて、野田が解散を選べば、小沢グループは壊滅する。小沢の言う「出撃しても戻れない特攻隊」となるからだ。
不信任案が駄目となれば野党は問責決議案を可決するしかあるまい。問責の材料は現段階でも山ほどある。野田が環太平洋経済連携協定(TPP)で“二枚舌”を使い、消費税では「4年間導入しない」はずの公約を破って、増税準備法案を提出したことを突くしかない。「法案は増税したことにならない」などという詭弁は通用しない。外交・内政にわたっての“二枚舌”をテーマとするのだ。過去の例を見ても、これほど格好な問責のテーマはない。首相への問責決議案が可決された例は二度あるが、福田康夫に対しては後期高齢者制度の廃止に応じないこと、麻生太郎に対しては解散引き延ばしと発言のぶれがテーマだ。全くいいかげんな材料である。だいたい後期高齢者制度など政権が変わっても、いまだそのままではないか。それに比べれば“二枚舌”ほど簡潔にして、明確な材料はあるまい。問責決議は不信任可決と異なり、法的拘束力はない。しかし、過去に成立した5例のすべてで、結果的に閣僚は辞職、首相は退陣につながっている。福田の場合は3か月間持ちこたえたが、結局ぷっつんと切れた。麻生太郎の場合は解散・総選挙での与党敗退により、2か月後に退陣した。首相は、「ぷっつん」か、解散・総選挙に追い込まれるのだ。
問責の戦術としては、3月下旬か、4月に上提して、一挙に解散に追い込むのがまず第1の手段だ。それでも野田はごねるだろうが、問責さえ成立させれば、主導権は野党にある。問題は、マスコミが「参院の審議拒否はけしからん」と一週間後くらいから野党に矛先を向けてくるが、これに持ちこたえられるかどうかだ。自民党が死んだ気になってマスコミの攻撃から目をつむり、耳をふさいで、1、2か月間拒否し続ける度胸があるかということだ。続けられれば、野田も音を上げる。解散を勝ち取るにはこれしかない。しかし固い契りがあるはずの公明党あたりが耐えられなくなって、裏切る可能性もある。一方、野田が音を上げた場合に実現し得るのが、消費税、特例公債法案を成立させることを前提とした「話し合い解散」だ。これが実現する場合は、6月の会期末となろう。通常国会ではこの3月危機と6月危機の2つのチャンスしかない。これを逃せば、その後の解散・総選挙の予想など「鬼が笑う」から出来ない。
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