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2006-07-05 00:00
東アジア諸国側に定着した役に立たないAPECの認識
斉藤欽一
会社員
ジョゼフ・キャロン駐日カナダ大使の日本記者クラブにおける講演テキストを「CEACコラム」で拝見しました。現時点でのアジアにおける共同体形成の流れを3つに分類した分析など、傾聴に値する点が多々ありました。しかしながら、経済統合のプロセスについて、APECの役割を過大評価しているのではないかと違和感を感じましたので、その点について私見を述べます。
1997年のタイ・バーツの暴落から発したアジア経済危機に対する対応において、アメリカとIMFが期待に応えてくれなかったという不信感が今でも東アジア諸国の間に根強く存在しています。また逆に当時の日本の対応が高い評価を受けており、その後のチェンマイ・イニシアチブ(CMI)が東アジア共同体構想自体を進める大きな契機となっています。現在の東アジア経済の域内相互依存度の高さは、こうした事実の積み重ねの上に築かれています。その場合において、APECがほとんど何の役にも立たなかったとの認識が東アジア諸国側で定着し、それがAPECのその後の活動停滞にもつながっていると思われます。また、アジア・太平洋という概念が広すぎて具体的な問題の解決に繋がらないと考えられていることも事実です。
私は東アジア共同体構想は、「開かれた地域主義」の原則の基に、ASEANが運転席にすわり、「ASEANプラス3」が「主要な手段」となりながら、「東アジア・サミット」も「重要な役割」を果たしていくという、昨年12月の「ASEANプラス3」と「東アジア・サミット」の合意を単なる妥協の産物と考えるのではなく、今後の長期的な方向性を示したものと理解して進めてゆくのが一番現実的であると考えております。
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