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2011-11-15 00:00
ライオンとドジョウの違いは気迫とスタイル
高畑 昭男
ジャーナリスト
著名人ランキングで知られる米経済誌フォーブスの「世界で最もパワフル(影響力のある)な人物70人」で、野田佳彦首相は下から9番目の62位だったという。日本で不人気ランキングをすれば鳩山由紀夫元首相と1、2を争うとみられる菅直人前首相でさえ、同誌による昨年のランキングでは27位を占めていた。日本の首相として一気に35段階も落下したことになる。
野田氏の上には温家宝・中国首相(14位)、北朝鮮の金正日総書記(37位)、ロシアのメドベージェフ大統領(59位)らが並び、下は習近平・中国副主席(69位)ぐらいだ。アジアに限らず世界全体で日本のパワーがますます低下していくのを見せつけられるようだ。知名度が高ければ何でもいい、というわけではないが、同誌のサイトでは野田氏を「5年間で6番目の首相」と紹介するだけで、何の特徴も記していない。9月にニューヨークで行われた日米首脳会談に触れた記事では「日米同盟は名ばかりとなり、実効性に深い疑問がある」と米人記者が書いていた。
首相が与党の結束や震災復興などの難題に直面しているのも事実だが、何よりも指導者として国民の胸を打つ気迫と世論を引っ張っていくスタイルが感じられないから、これがせいぜいのランキングなのだろう。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉参加問題も、消費税増税もしかり、国民の前で正面きって明確な決断を示そうとしない。それでいて、G20首脳会議など国民不在の海外の場を借りた説明などで済まそうとする姑息な印象すらある。
TPP問題は与野党ともに賛否が激しく割れているが、かつて郵政問題も同じように白熱した。だが、当時の小泉純一郎首相は就任前から「郵政改革」の旗をぶれずに掲げ、最後は解散総選挙に政治生命を賭けて法案を成立させた。そうしてこそ、反対論者にも「ライオン」の気迫とスタイルを感じさせた。ドジョウを自認する野田氏にとって「旗」とは一体何なのか。沈黙と安全運転以外に自前のスタイルはないのか。そうしたものが見えないから、ますます国民は動揺し、日本の存在感も薄れていくのではないか。
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