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2011-11-11 00:00
野田は決断一日延期でも求心力が陰る
杉浦 正章
政治評論家
こういうときは、「やらなかったらどうなるか」を深く考えることだ。そうすれば「退くが地獄」の状況がよく分かる。環太平洋経済連携協定(TPP)参加の決断を首相・野田佳彦が一日延ばしただけで、野党も民主党内反対派も鬼の首を取ったかのように喜ぶのは、浅慮の致すところだろう。野田はやらざるを得ないのだ。まず野田が「やるのをやめた」と言ったらどうなるか。「おれが、おれが」の鳩山由紀夫と菅直人が「オレオレ詐欺」なら、野田は「やる、やる詐欺」になる。鳩山が普天間移設を「最低でも県外」と言いながら、「学べば学ぶほど海兵隊の抑止力が分かった」と撤回したのと同じだ。マスコミは全国紙全紙が11月10日付の朝刊で同日の首相決断を断定的に報じたが、官邸取材が最長不倒距離12年の筆者には、手に取るように事情が分かる。官房長官・藤村修はじめ側近が裏で「やる」と断定しているから書いたのだ。野田自身も10日朝の国会答弁で「高いレベルの経済連携と農業再生の両立を図る」と踏み込んでいる。確証があるから、断定的に書けるのだ。
「やる、やる詐欺」の場合の第1のマイナスは、これまで推進論を取ってきたマスコミを完全に敵に回すことになる。次に経団連など財界も確実に離反する。おそらく米国に対しては外交ルートを通じて、「やる、やる」の方針が非公式に伝わっているだろうから、日米関係にも大打撃となる。ホワイトハウスは報道官を通じて「深い失望の念」を表明するだろう。次いで13日に予定していたオバマとの首脳会談は5分間でそそくさと終わる事になる。逆に中国、韓国、ロシアは「それみたことか」とばかりに、欣喜雀躍する。そして野田が得るものは、これらの反応を報道するマスコミのとげとげしい論調である。野田に一縷(る)の望みを抱いていたマスコミは、野田を完全に見放す。鳩菅への対応とそっくりの報道となり、民主党政権は早期解散へと追い込まれる。「政局」になってしまうのだ。
こうした自明の理を野田は、分かっていないはずはない。それでは何故一日延ばしたかというと、反対派への慰撫工作と、閣僚から反対の声が出る危険があり、これも説得する必要があるからだ。反対派頭目の山田正彦の離党扇動に乗って半可通の一年生議員らが飛び跳ねる可能性は否定出来ない。離党者をできるだけ少なくとどめるためにも幹事長・輿石東としては一晩でも時間がほしいところだろう。また閣内でも農水相・鹿野道彦や反対の国民新党から出ている金融相・自見庄三郎らが反対の動きに出れば、更迭して差し替える必要が出るかも知れない。これも政局になりかねない。少しでも説得して、最終確認する時間が必要なのだ。したがってワンクッション置く必要があったのだ。ただ、予定していた決意表明の記者会見を一日でも延期したことは、野田のリーダーシップが揺らぐものと受け止められるだけに、政権にとっては手痛い打撃となる。そもそも野田は、TPPで自らが前面に出て国民をはじめ党内や閣内への説得をしたことはただの一度もない。経済連携プロジェクトチーム(PT)への出席もなく、閣僚会議などでの説明もない。かねてから指摘されているように、安全運転の度が過ぎるというより、ここまで来ると政治手法そのものが“逃げ”を基本としているように映る。求心力への打撃となったことは否めないのだ。
民主党内反対派は気勢を上げているが、山田も本当に阻止できるとは思っていまい。相変わらず離党ばかりを口の端にのせているが、こちらの方もこれだけ煽った以上「辞め、辞め詐欺」にならないように、野田が決断したら本当に離党して、政治信条を果たさなければなるまい。一方で、野党の対応も醜態だ。自民党も「拙速な判断」とTPP決断に反対しておきながら、副総裁・大島理森が「『逃げるな、総理大臣』と申し上げたい」と言うのは論理矛盾ではないか。何でも反対すればよいというものでもあるまい。この場面において野党で一番男を上げたのが、自民党の小泉進次郞だ。「自民党は拙速だというが、私は遅すぎると思っている」と発言したのだ。執行部に対しても「早期解散をいうのなら、遅すぎると何でいわないのか」と批判した。おそらく父親・小泉純一郎のアドバイスがあるのだろうが、この判断は正しい。同じ一年生議員でもバブルで当選して、今になってうろたえている民主党の有象無象とは異なる。将来が楽しみだ。
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