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2011-10-27 00:00
(連載)中国高速列車事故とチェルノブイリ(4)
山下 英次
大阪市立大学名誉教授
このように見てくると、中国社会の変革は、非常に遠い将来のことではないかもしれないという気がしてくるのである。一般に、多くの人々は、そう遠くない将来に、大きな変化が起こるとは考えない。しかし、歴史を遡ると、多くの人々がほとんど起こりそうもないと思ってきたことが、実際にはいくつも起こってきた。ソ連邦の崩壊、中国・インド・ブラジル・トルコなどの新興国経済の大躍進、リーマン・ブラザーズ危機による米国ウォール・ストリートの大混乱、中東ジャスミン革命、等々である。われわれ日本人としては、中国社会の民主化も、そう遠くないうちに起こりうるかもしれないと考えておいた方が良いのではないだろうか。
ただし、その際、その移行プロセスがスムースに行くかどうかは、全く分からない。比較的順調に行くかもしれないし、大混乱を来たすかもしれない。すでに述べたように、中国の混乱は、わが国に対しても、大きなマイナスの影響を及ぼす。最悪の場合には、民族紛争と結びつくなどして内戦に近い状態にならないとも限らない。現在の中国の指導者を含めて、それは誰にも分からないだろう。中国社会は、日本人が考えるより遥かに不安定である。中国からの留学生と接していると、内戦の危機もありうるかもしれないと考えている人がかなり多いことに驚かされえる。彼らは、日本社会の安定性と自国の不安定性を対比させているのであろう。
現在の中国における経済体制と政治体制のミスマッチは、いずれ必ず収斂していくことになろう。その意味で、中国の民主化は、いずれある時点で必ず起こらなければならないし、基本的には、それはわが国にとっても好ましい。いずれ、「アジアの時代」、すなわちアジアが世界をリードしていく時代が来るであろう。日本は、アジアにもっと入っていかなければならない。特に中国との親密な協力が欠かせないが、そのためには、日中の歴史的和解が必要である。独仏両国の歴史的和解への道を開いた「シューマン宣言」(1950年5月)にならい、いわば「アジア版のシューマン宣言」が必要とされわけであるが、中国が共産主義国のうちは難しいだろう。中国が民主化され、諸外国の情報にすべての人々が自由にアクセスすることができるようになって初めて、そうした可能性が出てくる。
イギリスのBBC放送が中心になって行っている世界各国を対象とした世論調査があり、国際社会に最も好ましい影響を与えている国、悪い影響を与えている国はどこかを示したものがある。日本については、2005年から調査対象となっているが、それによると、日本は、カナダやドイツと並んで常に世界第1位かもしくは第2位である。これに対し、アメリカは下から数えた方がずっと早いぐらいであり、余り評判はよろしくない。すなわち、現在の国際社会における価値観とは、一部の西欧諸国や日本の人々の価値観が最大公約数であるということである。その意味で、われわれはもっと自信を持つべきである。しかし、このBBCの調査においても、中国人の日本に対する評価は極端に低い。中国の一般国民は、感情に任せて不用意に日本を批判すると、国際社会の価値観からそれていくことになるので、結局のところ、中国の国際社会における評判を貶めることになるということが、まだほとんど分かっていない。昨年の尖閣諸島事件は、その最たるものであった。中国が民主化され、国民が世界の情報に自由にアクセスできる状況になれば、こうした状況も大きく改善されることになるであろう。(おわり)
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