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2011-10-22 00:00
(連載)欧州統合を巡るジェンダーの問題(2)
山下 英次
大阪市立大学名誉教授
これは、タブーなのかもしれないし、筆者は、男性優位論者ではないが、ここまでくると、筆者には、欧州統合を巡るジェンダーの問題が、どうしても頭から離れないのである。欧州委員会では、もう40年間近く前からユーロバロメーターとして、様々な世論調査を実施している。今年5月に実施した最新の『ユーロバロメーター75』によれば、「自分をEU市民だと思うか?」との問いに対して、イエスと答えたのは、男性が65%に対して女性は59%にとどまる。「EUの将来について楽観的か?」との問いに対してイエスと答えたのは、男性が60%に対して女性は55%である。さらに、「EUがどのように機能しているか理解しているか?」との問いに至っては、イエスと答えたのは、男性が52%に対して女性は僅か39%にとどまっている。
今回は、国別に性による内訳は出ていないが、この種のプロ欧州統合か否かの世論調査に関しては、従来、どの国でも一貫して、欧州統合に対する支持率が、女性の方が男性より、数パーセント・ポイント下回ってきた。この種の類の世論調査については、なにも、欧州に限ったことではなく、大きなプロジェクトに対する支持率は、どの国でも、概ね女性の方が男性よりかなり下回るようである。例えば、東京都は、2020年のオリンピックへの立候補を決めたが、これに関し賛否を問う世論調査でも、女性の支持率は男性のそれをかなり下回っていた。
欧州統合の推進に多大なる貢献を果たしたとして顕彰すべき人物を挙げるとすれば、これまでに、リッヒャルト・クーデンホーフ・カレルギーをはじめとして、アルチーデ・デ・ガスペーリ、ジャック・ドウロール、ヘルムート・シュミット、フランソワ・ミッテラン、ヘルムート・コール等々、数十人の人物を挙げることができる。さらに、遡れば、文豪のヴィクトール・ユゴーも忘れてはならない。しかし、筆者は、率直に言って、欧州統合に顕著な貢献を果たした人物をとして、女性の名前を一人も挙げることはできない。逆に、欧州統合の動きを遅らせようと熱心に活動した大物女性政治家の名前は思い浮かぶ。マーガレット・サッチャーである。しかし、ヨーロッパは、サッチャーのイギリスを置き去りにしてでも、前へ進んできた。
全般的な政治的手腕については、メルケル首相の方がサルコジ大統領よりも上なのかもしれないが、欧州の危機対応を巡っては、サルコジの方がより積極的であるのに対して、メルケルの方が煮え切らないために、対応が不十分となってきた。結局のところ、メルケルは、欧州統合という壮大なプロジェクトに対して、いま一つ熱心になれないのではないだろうか。(おわり)
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