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2011-10-12 00:00
お手盛りで野田代表の任期延長をすべきでない
杉浦 正章
政治評論家
ここに来て何故民主党代表の任期改訂かというと、背景に邪心が見え隠れする。党内の一部に1年後の代表選を見送り、首相・野田佳彦の長期政権の土台を作ろうという意図があるといわれているのである。これが本当の狙いなら、横綱が相撲を取りやすいように土俵を変えてしまおうという荒唐無稽な政治であり、あきれかえるしかない。任期を変えるのは政党の勝手だが、現職首相への適用は、あまりにも国民不在の政治判断である。来年9月の代表選は、現行制度のまま実施し、新代表からの適用とするのがスジだろう。
そもそもの任期改訂問題は、前幹事長・岡田克也が、菅直人が首相就任後3か月で代表選挙を行った問題をとらえて、検討に着手し、改定案を作ったものだ。内容は、(1)政権政党である間は代表の任期をなくすが、リコールは可能とする、または(2)任期を2年から3年に延長する、の2案。要するに、1年で首相がころころ変わるのは代表選規約にも問題があるという判断から、前代表の任期を受け継がずに、任期を伸ばして、安定政権を目指そうというものである。その構想自体は、現実政治より規則重視の岡田らしい発想で、別に異論をはさむものでもあるまい。しかし、長年政治を見ていると、規則を変えたからといって、政権が長持ちするものではないことがよく分かる。任期2年だろうが、3年だろうが、続く政権は続くし、続かない政権は続かない。民主党の場合、鳩山由紀夫と菅直人が1年しか持たなかったのは、ひとえに個人的な政権担当能力の問題であった。自民党の場合は、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎が1年であったのは、衆参のねじれと同党の屋台骨の寿命が尽きていたからにほかならない。
それでは、長期政権と政党トップの任期は関連があるかどうかだが、ないのだ。佐藤栄作は、任期途中で自民党総裁任期が2年から3年に変えられたが、長期政権だった理由は、沖縄返還の成功にあった。中曽根康弘も、任期中は2年の任期であったが、田中角栄が病気で倒れたことが長期政権につながった。いずれも任期とは関係がない。小泉純一郎も、任期中に2年から3年に任期変更となったが、長期政権は郵政解散の成功の結果だ。このように短期政権も、長期政権も、時の政治情勢と政権担当能力に左右される傾向が強い。そこで出てきている民主党の任期改訂論だが、改訂して首相・野田佳彦の任期の来年9月に選ばれる代表から適用するのなら何ら問題はない。当然野田再選なら新しい任期が適用されるのもよい。しかし、政治家の思惑というものは、一筋縄でいくような簡単なものではない。何故この時点で任期延長論かということだ。事実、幹部の間では「野田さんから適用するように出来るかどうか、が最大のポイント」とささやかれている。
つまり「野田長期政権」への思惑があるのだ。一番うまく事を運ぶには来年1月の党大会で「現職からの適用」を決めてしまうことだ。このような動きがささやかれている背景には、いずれにしても接近してくる総選挙を前に、野田以外の代表で戦うことの危険性を感じているからにほかならない。来年の通常国会での解散なら、紛れもなく野田で戦うことになるが、任期満了近い総選挙でも、他の代表で戦うリスクを考えれば、野田の方がましという判断であろう。しかし、この動きはあまりにも永田町的であり、お手盛りの任期延長では国民には理解されまい。野田も「正心誠意」をいうのなら、姑息な手段が出てきても、これを排除して、正々堂々と一年後の代表選に臨むべきだろう。
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