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2011-10-04 00:00
債権者を債務者にすり替える詐術
田村 秀男
ジャーナリスト
野田佳彦首相は、「次世代にツケを残してはいけない」とお念仏のように唱え、東日本大震災からの復興財源として増税に突っ走る。この殺し文句に与野党議員もメディアもコロリと参っている。待てよ、このセリフ、どこかで聞いたような。実は、財務省のプロパガンダの常套句である。巨額の公債が次世代の負担となってのしかかると野田首相ら政治家をやすやすと洗脳し、「復興増税」路線を採用させた。財務省はホームページで、政府の公債残高が平成23年度末に約668兆円に上り、公債の元利払いから逆算して一世帯当たり6661万円ものローンを家計が抱えているのも同然と脅す。この衝撃的な数値を、メディアは経済専門の日経新聞をはじめ、何の疑問も抱かずに報じてきた。評論家や大学教授の多くも受け売りしているのが現状だ。ちょっと考えてみよう。
会計学の基礎知識があればわかることだが、この借金はあくまでも政府の債務である。債務にはそれに見合う債権(資産)が必ずある。政府債務の約95%を引き受けているのは日本国民の貯蓄である。言い換えると、われわれは一家計当たり、6661万円×0・95=6327・95万円の債権、つまり金融資産を政府に対して保有しているわけである。なのに、財務省は巧妙に国民の莫大な借金にすり替えてしまった。詭計はさらに続く。これほどの借金なのだから、国民は返済のために税金をもっと納めよ、つまり増税に応じよ、復興のための公債償還財源は増税で行こう、とくる。
そんなバカな話はないだろう。どんなあくどいヤクザ者でも「ショバ代をもっと払え、そしたらあんたから借りたカネを返す」とまでは言わないだろうに。重要なのは、公債発行によって国民の資産を運用して、国民に利子を払い、さらに日本経済をデフレから脱出させ、復興を遂げ、日本列島に活力と強靭さをもたらす政策である。債権者である国民の代表である国会議員たちは、政府が効率的な財政出動により、日本経済を成長させ、デフレから脱出させるよう厳しくカネの使い道をチェックする重大な権利と役割があるはずだ。この権利を行使するためには、有権者が貸し手であり、貸し手として自覚し、野田内閣や財務官僚に厳しく注文をつける必要がある。増税とは本末転倒もはなはだしい。
問題企業の債権者や株主であれば、無能な経営陣の責任を追及し、責任をとらせる。賠償させる。監査役が怠慢なら即刻退場だ。増税は官僚を楽にさせる。消費税でも、所得税でも、法人税でも、タバコ税でも、とにかく税率を上げてしまえば「とらぬ狸式」の予算見積り上、しめたもの。カネを借りて返済するわけではないから、増税決定後はやりたい放題、自省の権益を拡張できるし、給与カット、人員削減圧力を受けることもない。増税前には議員から削減案が出るが、結局は申し訳程度の削減でやりすごすのが官僚の得意技だ。官僚に依存する野田政権はインサイダーも同然で官の言いなり。ひたすら増税こそが国民の「連帯」の証しだと連呼する。そのお先棒を担ぐ不勉強なメディアにこれ以上だまされるな。
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