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2011-10-03 00:00
小沢は何故ネットテレビを活用するのか
杉浦 正章
政治
「引かれ者の小唄」では、有罪で引かれるのが来年4月かも知れないから、まだ早い。現段階では「泥棒にも3分の道理」がピタリだろう。民主党元代表・小沢一郎が10月2日、インターネット番組に出演して、一時間にわたって怪気炎を上げた。録画してチェックしたが、秘書有罪判決への不満や内政・外交論を、自らのストレスを発散させるかのごとくに、とうとうとぶちまけた。秘書3人に対する有罪判決は「私はスケープゴートにされた」のだという。ネット番組は2度目だが、大手マスコミに追い詰められた政治家の新しい“逃げ場”として定着した。ネットテレビとして独自の文化を築いているニコニコ動画に出演した小沢は、終始上機嫌で、普段の寡黙さとは打って変わった表情を見せた。全国紙やテレビが何とかして判決後の小沢の言葉を報道しようと懸命になっているのに、これに応じずネットに出演したのは、なぜだろうか。番組の中で小沢は「新聞は何をしゃべってもその通りに伝えてくれない。偏向した報道に終わってしまうので国民に真意が伝わらない。ネットの方が正確に伝える。国民が判断すればいい。テレビや新聞が偏向していては駄目だと思っている」と既成メディアに対する不満を述べている。この発言で佐藤栄作の最後の記者会見を思い出した。「新聞記者は出て行け」と追い出して、1人でテレビカメラに向かってしゃべったのだ。やはり新聞が発言をねじ曲げることが、その理由だった。小沢はその会見をありありと見て知っている。強烈な印象として残っているに違いない。
しかし、このネット番組の偏向度は、新聞の比ではない。お追従と偏見に満ちているのだ。司会者や質問者の発言を見れば分かる。「でたらめの判決だった」「検察の捜査はとんでもないでたらめだ」「法治国家の終焉(えん)であり、独裁国家だ」「小沢さんが唯一の希望だ」といった具合だ。これが小沢の耳に心地よく聞こえて、舌を滑らかにさせたのだろう。このネット発言は、全国紙やテレビはろくろく報道しないことは、目に見えている。出し抜かれた悔しさと、矜持が許さないのだ。しかし、これは間違っている。問題は小沢自身が何を考えているかであって、その内容は国会論議や証人喚問問題にも跳ね返る重要な要素に満ちあふれているのだ。発言を詳細に報道する価値はあり余るほどある。やはり佐藤内閣時代の初期、確か1972年頃に、新聞が軽蔑していたテレビの報道を、読売新聞が一面3段で報道し、それ以来新聞がテレビにおける政治家の発言をちゅうちょなく報道するようになった。ネットも同様だろう。今後さまざまな番組が出来て、政治家は引っ張りだこになるだろう。政治家にとっても利用価値があるのだ。報道の公正さをいちおう綱領に掲げる新聞・テレビと違って、自民党に付こうが、民主党や共産党に付こうが、自由なネット報道の時代が来ているのだ。政治家がどのネット番組を選ぼうが自由だ。問題は、小規模であるがゆえに政治家に買収されかねないことだが、当面は視聴者が見極めるしかない。
小沢は秘書3人の有罪判決について「民主主義国として考えられない判決で、びっくりしている。既得権を持っている人にしてみれば、あいつだけはと最大の狙いの対象となり、スケープゴートにされたのだ。あいつだけは国政の先頭に立たせてはいけない、という意識が働いた」と述べた。政治家や財界人ならともかく、地裁の裁判官を「既得権を持つ人」とするのは、見当外れだが、小沢の被害者意識が現れていて、興味深い。何かある度に「民主主義」を持ち出すのは、ヒットラーと同じだ。政局に関しては「民主党政権は2年前の国民の熱狂的な支持で出来た。あと2年で信頼を取り返す政治をやるか、きちっと見つめてゆきたい」と述べた。菅政権時代には「解散がいつあるか分からない」と述べていたが、野田政権では「解散は遠のいた」と見ているのだろう。逆に「早期解散はさせない」という意思の表れでもあろう。「首相になるべきだ」とのお追従質問には、「自分がそういう立場に立ったら、責任回避やポジションにすがりつく類いのことだけはしたくない。そういう気持ちでやりたい」と述べた。まだ首相になれると思っているのか、それとも首相になると言わなければ求心力を保てないのか、のどちらかだ。発言要旨次の通り。
【秘書有罪判決】大変びっくりした。独裁国家で気にいらんやつに有罪の判決を出すなら別だが、民主主義国家で何の証拠もないのに推測で有罪だ。民主主義国として考えられない判決でびっくりしている。私と政治団体に不正な金をもらっているに違いないという前提で強制捜査を行った。収支報告書の書き方の話しだけ。事務的な間違いだ。書き間違えと強制捜査はなじまない。だから私を起訴するに至らなかった。それを不正な金銭授受があったとして、推測で決めて犯罪だとしたのはびっくりした。
【裁判批判】旧体制から半世紀を経て民主党政権になった。既得権を持っている人にしてみれば、あいつだけはと最大の狙いの対象となり、スケープゴートにされたのだ。あいつだけは国政の先頭に立たせてはいけない、という意識が働いた。民主党と言うより、僕自身が彼らの狙いだ。民主主義国家でこのような裁判が行われたことは非常に心配だ。陥れてやろうと思ったら、一方的な意見だけで判決が左右されるのでは、暗黒社会になる。国民の人権を守らなければならない裁判所が劣化しているのは心配だ。
【大手報道機関批判】ネットはそのまま伝わるが、新聞は何をしゃべってもその通りに伝えてくれない。偏向した報道に終わってしまうので、国民に真意が伝わらない。ネットの方が正確に伝える。国民が判断すればいい。テレビ・新聞が偏向していては駄目だと思っている。
【大震災対策】復旧復興もトップの総理が決断してやるべきだ。日本では最終決断する人がいない。その立場にいる人が誰も最終決断しない。野田総理には蛮勇をふるってでも、大いなる決断をしてやってもらいたい。
【政局展開】政局の話は、新聞が一番興味を持つので困る。民主党政権が2年前の国民の熱狂的な支持で出来た。あと2年で信頼を取り返す政治をやるか、きちっと見つめてゆきたい。
【国際情勢】ユーロの危機は当面回避できたが、根本的な解決に至っていない。通貨危機、米国の不景気で全世界的なものになる恐れがある。原発を抱えて日本は、金融恐慌、世界金融恐慌の恐れがある。中国はバブルが弾けたら、政治動乱の恐れがある。共産党独裁も崩壊すると思う、と中国幹部に言っている。そうすると深刻な話になる。日本が中国を助けることもありうる。これらの問題がいっぺんに重なってしまうと、日本が一定の生活を維持できなくなる恐れがある。
【小沢首相】自分がそういう立場に立ったら、責任回避やポジションにすがりつく類いのことだけはしたくない。そういう気持ちでやりたい。
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